バルセロナに彗星の如く現われたある選手が、話題をさらっている。

　ホセ・アルナイス、22歳。その名は各紙の一面を飾っただけでなく、テレビでは生い立ちが紹介され、ネット上は賛辞で溢れた。

　ほんの数か月前までは、ほぼ無名の存在だった。にもかかわらず、ピレネー山脈から吹き始めた北風のような勢いで、目の肥えたバルセロニスタのハートを掴み、いまやすっかり彼らのお気に入りとなったのである。

　生まれは、スペインのほぼ中央に位置するトレド近郊のタラベーラ。昨シーズンはバジャドリー（２部）のエースとして活躍した。今夏に移籍金340万ユーロ（約４億4000万円）でバルサBへ加入する際には、Bの選手にしては高すぎるのでは、という声が少なくなかった。

　数年前、獲得間近だったマルコ・アセンシオをレアル・マドリーにかっさらわれた件をいまだに悔やんでいるクラブの幹部が、同じ失敗は繰り返せないとばかりに移籍金を積んだというのがもっぱらの噂である。

　しかし、ミニ・エスタディでアルナイスのプレーを観た者は、その額が適正どころかバーゲン価格であったと知ることになる。抜群のテクニックを披露し、バルサに相応しい選手であると証明したのだ。

　全国区となったきっかけは、センセーショナルなトップデビューだ。10月末に行なわれたムルシア（３部）とのコパ・デル・レイ４回戦。パコ・アルカセル、ジェラール・デウロフェウと３トップを組み、左ウイングで先発出場すると、２-０で迎えた56分にカットインから右足を振り抜き、鮮やかなゴールを決めたのだ。

　称賛を浴びたのは得点だけではない。テクニカルなプレーを連発し、誰よりも際立つパフォーマンスを見せたのである。「夢のようなデビュー戦だった。これ以上はないくらいにね。初先発に初ゴール、そして勝利に貢献できた」。試合後のインタビューで、アルナイスはそう喜びを表現した。

　スタメンに抜擢したエルネスト・バルベルデ監督は、「ゴラッソだった。ボールを持つと、常にゴールをイメージしている」と目を細めた。