【現役の眼】橋本英郎がブラジル戦を見て考えた「日本はどうすれば強豪国に勝てるのか」

カテゴリ:日本代表

橋本英郎

2017年11月12日

いままでの対戦相手では体験できなかった代物。

W杯予選の豪州戦と同じアプローチで選手たちを送り出したハルリホジッチ監督だが……。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 見るべきはやはり、この前半の戦いだったと思います。後半は相手が少し流す感じになっていたので、フォーカスすべきは明らかに前半。いくつかポイントがありました。
 
 ゲームを決めてしまった大きなポイントは4つ。
 
 まず1点は、スピード感覚。これは相手が日本をしっかりリスペクトしてくれたからこそ生まれたものだと思います。日本のボールの寄せが早い。それによって相手選手のテンポも判断もスピードアップしました。
 
 日本はふたりでボールを取りにいったりもしましたが、ブラジルの選手たちは不利になりそうになると上手くワンツーで突破したり、フリックをして3人目の動きなどを活用していました。このプレーの速さと考える判断の早さ。いままでの対戦相手では体験できなかった代物だと思います。
 
 寄せの早い井手口陽介選手がネイマール選手の足を蹴ってしまうシーンが何度かありました。油断しているようで、寄せに合わせてすぐに相手の届かないところにボールを動かし、次の動きに入っていたのです。そのため井手口選手はボールに触れず、足を蹴ってしまった。
 
 2点目は、プレッシャーに対する感覚の違い。これは強豪国と対戦する時は、何度も起こり得る事象だと思います。日本の選手は相手守備のレンジを広く感じていた。一見積極的に回しているようで、チャレンジするようなボール回しはなかなかできていませんでした。
 
 かたやブラジルは、日本の選手に激しいプレッシャーを掛けられている選手に対しても、普通にパスを出していました。どのポジションの選手にもその傾向がありましたね。だから日本はハイプレスでボールを奪えたりもしたわけですが、先ほど言ったように、ウィリアン選手とネイマール選手にその網を一度突破されてしまうと、取り返しのつかない致命的なカウンターを食らっていました。
 
 プレッシャーをプレッシャーと受け止めていない。相手にとって脅威となる攻撃的な選択ができる。ブラジルのような強豪国の選手が持っている感覚です。
 
 3点目は、「技術」の部分です。簡単に技術と書いてしまえばなんだかよく分からなくなるので、細かく3つに分けます。
 
 ひとつは、パスの強弱。スペースに出すボール。足下でワンツーをさせるためのパス。ロングパスだけどあまり高く上がらないサイドチェンジ。ブラジルには意図のあるパスが多数ありました。まったく意味を持たないパスもあるのですが、それがまた、意図するパスを際立たせている。選手間の距離を取らないパス交換などは本来必要ないと思われますが、それでもボールは動きます。1か所に留めおかず、ボールを常に動かすことで、日本に気をおく時間を与えなかったのです。
 
 2つ目は、ボールを受けた次の選手に、選択肢を考える時間を作る技術です。パスもですが、ドリブルであえて相手選手を引きつけ、次に受けた選手が余裕を持って判断できる時間を創出する。小さな局面で複数の人数を掛けて日本はボールを取りにいっていましたが、ダイレクトパスやマークを背負った選手がブロックするなど、ブラジルの選手たちは早いテンポで局面を脱していました。
 
 3つ目は、剥がす力です。何度も述べてきましたが、背負っている選手がボールを持つのはあまりいい状況ではありません。でもブラジルの選手たちはマークに来ている選手一枚を剥がすことを嫌がりませんでした。そのため、本来日本のプレッシャーを嫌がり、次の選手が苦しい状況でボールを受けることが多くなるはずが、そうはならなかったのです。後半はその部分で、ブラジルは上手くいってなかったように思います。なぜなら剥がすことはできても、それを受けて、周りの選手があまり連動性を持って動けていなかったからです。
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