チームを指揮するマウリツィオ・サッリは、プロ選手キャリアを持たない叩き上げ。銀行に勤めながらアマチュアリーグで監督キャリアをスタートし、およそ20年間下部リーグで下積みを続けた末、50代半ばでやっとセリエAの舞台にたどり着いたという苦労人だ。
 
　そのサッリのサッカーは、リズムの速いパス交換で敵陣にボールを運び、スピードに乗ったコンビネーションで一気に攻め切る、いわば「ポゼッションによる速攻」とでも呼ぶべき攻撃的なスタイルで一貫している。ナポリ就任３年目となった今シーズンはチームの戦術的完成度も大きく高まり、あのグアルディオラをして最大級の賛辞を惜しまないまでのレベルに到達した。
 
　例えば、そのグアルディオラが「ズタズタにされた」と表現した、このマンチェスター・C戦キッキオフから先制ゴールまでの20分間は、攻撃サッカーの教科書のようなプレーが満載だった。
 
　とりわけSBファウジ・グラン、インサイドハーフのマレク・ハムシク、ウイングのロレンツォ・インシーニェという「縦のトライアングル」に、CFドリース・メルテンスやアンカーのジョルジーニョが絡んで繰り広げる、ワンタッチ、最大でもツータッチのハイペースなパス交換による高速ポゼッション、そしてそこから一気に裏のスペースにボールと人を送り込む崩しは、スペクタクルそのもの。さらに、そこでボールを失ってもそこからすぐにアグレッシブなハイプレスに転じ、ボールにプレッシャーをかけ続けてスムーズなビルドアップを許さない組織的な守備の完成度も特筆に値する。
 
　CLでは難しい状況に置かれているものの、ナポリにとって今シーズン最大の目標はむしろセリエA。ディエゴ・マラドーナ時代の1989-90シーズン以来28年ぶりとなる悲願のスクデットである。
 
　ここまでの11試合は、スコアレスドローだったインテル戦以外、10試合で取りこぼしなく勝点３を積み上げ、２位インテルに３ポイント差をつけての首位。昨シーズンまでは、ターンオーバーして臨んだ下位チームとの試合で緊張が抜けたり、リードした試合の終盤相手の猛攻に遭ってばたついたりなどして、不用意な取りこぼしも目に付いたものだが、今シーズンはそういう試合もきっちり勝ち切る力がついてきた。