【香川密着】「変化」と向き合う戦いの証とは――

カテゴリ:ワールド

田嶋コウスケ

2014年04月18日

試合後のコメントから伝わる葛藤。

このルーニーやファン・ペルシを引き立てつつ、持ち味であるゴールへのこだわりは失ってはいない。 (C) Getty Images

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 ドルトムント時代の香川は、優れたフィニッシャーとして名を馳せた。ファイナルサードで決定的な仕事を任され、切れ味鋭いワンツーや素早いターンから得点を重ねた。2011-12シーズンは、中盤の選手でありながら年間17ゴールを奪取。「我々にはゴールを決められるMFが少なかった。カガワにはその状況を打開してくれることを切に願う」というアレックス・ファーガソン前監督の言葉通り、得点力の高さがユナイテッド移籍の引き金にもなった。

 ところが、指揮官がモイーズ監督に変わった今シーズンは、周囲を活かすプレーが格段に増えた。主戦場の左サイドMFで守備をこなしながら、パスやフリーランで攻撃やポゼッションを円滑にする。チームが守備重視で進めたバイエルン戦だけでなく、マンチェスター・シティ(28節)やアーセナル(11節)とのプレミアリーグでの試合でも同じような役割をこなした。

 得点よりアシスト。シュートよりもスルーパス。ウェイン・ルーニーやロビン・ファン・ペルシ、ダニエル・ウェルベックなど、前線に「個の力」だけで局面を打開できる選手が多い分、香川は「引き立て役」としてチームに貢献している印象が強い。

 もちろん本人は、最大の持ち味であるゴールへの強いこだわりを失っていない。モイーズ監督が目指すサッカーの中で折り合いをつけ、いかに自身の存在価値を高めるか。こうした香川の思いや葛藤は、試合後のコメントからもヒシヒシと伝わってくる。

「最後崩しの場面で、もっと自分も加わらないといけない。そこが自分の良さであると思っている。そういうところで、もっと存在感を出していかなくては。自分の中で、絶対にブレてはいけないところがある」
「もちろんサイドMFには守備も求められるが、それはみんな一緒。そこから前に出て行く能力や力強さが必要」(1月5日のFAカップ3回戦・スウォンジー戦後)

 ノースクロフト記者の言う香川の変化とは、つまり、モイーズ監督が日本の「No.10」に求める「役割」の変化のことだろう。そして、それに向き合っていくのは、ユナイテッドのようなビッグクラブでプレーする難しさでもある。

 守備をきっちりとこなしつつ、ゴールを挙げようと全速力で駆け上がる。アップダウンを繰り返す姿は、分厚い選手層と豪華なタレントを備えるユナイテッドで、必死に生き残ろうとする香川の戦いの証である。

文:田嶋康輔

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