戦犯、ベンチ外…でも消えなかった「シウバ待望論」。紫の10番が広島を残留に導く

カテゴリ:Jリーグ

中野和也

2017年09月25日

パトリックの加入でシウバ放出の噂も流れたが……。

 シウバも努力をやめなかった。トレーニングで全力を尽くし、居残りでもシュートを打ち続けた。周りのアドバイスに耳を傾け、投げやりな態度は一切、見せなかった。ブラジル時代に一目惚れした愛妻からの叱咤激励を受け止め、どんな環境でもファイティングポーズを崩さない。ファンサービスも欠かさず、常に笑顔を崩さない。「過去のブラジル人選手では見たことのない真面目さ」とクラブスタッフが驚愕するほどの性格は、多くの人々に愛された。
 
 だからこそ、彼の成功を誰もが願ったのだ。ただ、その真面目が故に失敗を引きずりやすく、ネガティブな波にも飲み込まれやすい。自分のプレービデオを見てコーチにアドバイスをもらって研究する生真面目さは、結果が出せないことで自分自身の気持ちを傷つけてしまう側面も持っていた。
 
 夏、パトリックの加入が決まり外国人選手が4人在籍することになった時、「シウバは放出されるのでは」という噂も流れた。織田秀和社長は「ヤン・ヨンソン新監督に評価してもらうのが先」と噂を否定。そして、そのヨンソン監督による戦術変更が、シウバにとっての転機となった。
 
 それまで前線の選手は自分のポジションでプレーすることを求められ、ポジションチェンジはほとんどなかった。だがその約束ごとから開放され、流動性を求められるようになったことで、シウバに躍動感が生まれた。練習試合・北九州戦でハットトリックを達成。練習でも成果を見せ始め、指揮官の評価を上げた。
 
 ヨンソン監督がC大阪戦で0−0の状況でシウバを投入した事実は、その評価の証明。それまで均衡状態の時は動かなかったヨンソン監督が初めて見せた「チャレンジの采配」にシウバはゴールという形で応えたのである。
 
 パトリックやアンデルソン・ロペスも存在感を見せた清水戦だったが、試合を決めたのはフェリペ・シウバの繊細かつクリエイティブな能力だ。力任せの攻撃には力で対応できても、アイデアに満ちた意外性のあるパスやシュートを完封することはできない。2012年からの4年間で3度の優勝を手にした広島の攻守を支えたのは規律。ただ、最終局面では髙萩洋次郎の天才としかいいようがない独特の感性が攻撃に華麗さを加えて佐藤寿人の得点力を増幅させ、連覇を手にした。
 
 2015年はトップ下にコンバートされた柴崎晃誠の正確無比なシュート・パスがドウグラスや浅野拓磨のパワーとシンクロした。技術に裏打ちされた創造力の重要性は、サッカーの歴史が証明している。
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