【黄金世代】第4回・稲本潤一「2002年初夏、日本全土を揺るがす」(♯5)

カテゴリ:特集

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2017年09月11日

なんであそこにおったんやろなとは思うけど、トラップで決まった感じ。

ロシア戦でもゴールを決め、僚友・小野の元へ駆け寄る。金髪のイナは“時代の寵児”となった。(C)REUTERS/AFLO

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 筋金入りのエリートだ。15歳で世代別代表に初めて選ばれ、ワールドユース(現・U-20ワールドカップ)、シドニーオリンピック、アジアカップ、コンフェデレーションズ・カップなど名だたる国際大会をすべて経験してきた。だからだろう、ワールドカップに対しても特別な思い入れはなかったという。
 
 常人には考えもつかない領域の話だ。
 
「正直、ワールドカップってものに対してそんな強い想いはなかったかもしれない。出たことがなかったんでね。アーセナルで練習しながら、『来年のワールドカップのためにも腐らずに一生懸命やろう』とは思ってましたけど、ひとつの世界大会でしかなかった。自分で言うのもなんですけど、とんとん拍子ですべての大会に出てた。ある程度の結果も出してるし、その延長線上にあった感じですね。シドニーが終わって、よし次は2002年やなと。
 
 いま思えば、もっと楽しんでおけば良かったんかな。生きてる間に日本でワールドカップが開催されるなんてないやろうから。ただ、そんな想いでやってたからこそ、リラックスしてプレーできたんですよ。トルシエとの間で信頼関係はあったし、大会前にコンディションを上げていける自信もあった。いま? どうやろ、いまのほうが緊張するんじゃないですかね(笑)」

 
 そして2002年6月9日、横浜国際総合競技場。伝説の夜だ。
 
 強豪ロシアを相手に一進一退の攻防を繰り広げる日本。迎えた51分、左サイドに流れた柳沢敦からグラウンダーのパスが中央に入る。オフサイドラインぎりぎりで受けたのが、稲本だった。冷静にGKラスラン・ニグマトゥリンの位置を見定め、ゴールに流し込んだ。金髪のボランチは2戦連続で大仕事をやってのけ、これが日本のワールドカップ初勝利を導く決勝点となった。
 
「勝たなアカン状況やったけど、硬さはなかったし、ロシアに負ける気がしなかった。なんであそこにおったんやろなとは思うけど、トラップで決まった感じ。一発で撃てるところに止めれたのが良かった。日本サッカーにとっては歴史的な一日やったんでしょうけど、僕はその足で静岡に帰りましたからね。よし次で決めるぞって感じで、そこまで余韻には浸ってない感じでしたよ。ほかのみんなも大会に集中し切ってましたから」
 
 日本は2勝1分けでグループリーグを突破し、初めてラウンド・オブ16に駒を進めた。決戦の相手は、最終的に3位入賞を果たすトルコ。雨が降りしきる利府の宮城スタジアムで、日本の快進撃は急停止した。
 
 0-1の敗北。「なんで(前半で)替えられたんかな、っていまでも思う。トルシエはああいうところがあるんですよね」と呟いた。
 
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