日本人らしい「ハーフコート制圧サッカー」

スピードと運動量で敵を押し込む、チリのような戦術を体現しうる人材が日本代表にも増えてきた。例えば井手口は自慢のハードワークで中盤の広範囲をカバーできる。 写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)
ただし、チリの完全なコピーをする必要はない。Jリーグでハイプレス&ポゼッションを実践するチームも参考にできる。例えば柏レイソル。平均身長はチリと同様に175センチ前後と低いが、それを補うスピードと運動量を武器に、高いラインを敷いて相手をハーフコートに押し込む。
柏が興味深いのは、このスタイルの弱点を組織的にカバーしている点だ。小柄でスピーディな選手を重用するため、どうしてもセットプレーの守備に不安が残る。そこで柏は相手CKの際に、フィールドプレーヤー全員をエリア内に置く。一般的にCKをゾーンで守る戦術は、高さのあるチームに多く見られるが、柏の場合は10人全員を下げ、より密度の高いゾーンを作って相手のスペースを制限する。エリア外に人を置かないので、CKからカウンターを仕掛けるのは難しいが、それでも小柄なチームの弱点を上手く補っている。
また、相手FKに対するラインディフェンスも美しい。柏のサッカーはディテールまで細かな配慮が行き届いており、チームとしての完成度の高さを窺わせる。
他にも、川崎フロンターレは狭いスペースでボールを動かす技術が突出し、鹿島アントラーズはアグレッシブなプレスが身上だ。また浦和レッズは引いた相手を崩してフィニッシュに持ち込む力が高く、リトリートされた時の攻略法を知っている。
Jリーグで発展した、こうした戦術の尖った部分を集め、今後の育成に落とし込む。そうすれば、チリのようでチリではない、日本人らしい「ハーフコート制圧サッカー」が完成するのではないだろうか。
文:清水英斗(サッカーライター)
※『サッカーダイジェスト』2017年7月27日号(同7月13日発売)「サムライ・タクティクス」より抜粋。
柏が興味深いのは、このスタイルの弱点を組織的にカバーしている点だ。小柄でスピーディな選手を重用するため、どうしてもセットプレーの守備に不安が残る。そこで柏は相手CKの際に、フィールドプレーヤー全員をエリア内に置く。一般的にCKをゾーンで守る戦術は、高さのあるチームに多く見られるが、柏の場合は10人全員を下げ、より密度の高いゾーンを作って相手のスペースを制限する。エリア外に人を置かないので、CKからカウンターを仕掛けるのは難しいが、それでも小柄なチームの弱点を上手く補っている。
また、相手FKに対するラインディフェンスも美しい。柏のサッカーはディテールまで細かな配慮が行き届いており、チームとしての完成度の高さを窺わせる。
他にも、川崎フロンターレは狭いスペースでボールを動かす技術が突出し、鹿島アントラーズはアグレッシブなプレスが身上だ。また浦和レッズは引いた相手を崩してフィニッシュに持ち込む力が高く、リトリートされた時の攻略法を知っている。
Jリーグで発展した、こうした戦術の尖った部分を集め、今後の育成に落とし込む。そうすれば、チリのようでチリではない、日本人らしい「ハーフコート制圧サッカー」が完成するのではないだろうか。
文:清水英斗(サッカーライター)
※『サッカーダイジェスト』2017年7月27日号(同7月13日発売)「サムライ・タクティクス」より抜粋。