日本が目指すべきチリの「制圧サッカー」。Jクラブも参考になるスタイルの正体とは?

カテゴリ:連載・コラム

清水英斗

2017年09月05日

日本が目指すべきはドイツではなくチリのスタイル。

コンフェデレーションズカップ決勝・ドイツ戦(●0-1)のチリの布陣。中盤4枚の運動量を生かしたハイプレスが光り、ドイツ戦でも相手の自由を奪った。

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「世界で一番強いのはブラジルで、2番目に強いのはブラジルのBチーム」
 
 そんなふうに言われていた時代もあったが、現在、そのフレーズがもっともしっくりくるのはドイツだろう。2014年のブラジル・ワールドカップを制した現世界王者は、先のコンフェデレーションズカップにメスト・エジル、トニ・クロース、マヌエル・ノイアーといった主力を招集せず、「Bチーム」で臨みながら、事もなげに優勝を成し遂げている。王者は内にライバルを作り、競争を活性化させた。ヨアヒム・レーブ監督の仕事は、実に隙がない。
 
 目を引くのは戦術の汎用性だ。グループステージではポゼッション重視のサッカーを見せたが、準決勝のメキシコ戦ではショートカウンターからの2発で早々と試合を決めると (最終スコアは4-1)、中2日の決勝に向けて体力を温存。迎えたチリとの決勝は相手にゲームを支配されながら、慌てずに守備を固め、ミスを突いて奪った1点で逃げ切った。試合ごとに異なる姿を見せる、変幻自在のドイツ。憎らしいほどに洗練されていた。
 
 しかし、日本が同じスタイルを目指すのは得策ではないだろう。ドイツの強さの根源にあるものは、昔も今も変わらない。それはゴール前の攻防だ。決定する力があり、そして決定させない力がある。このベースがあるからこそ、ドイツは中盤で無理をしない。押せないと見れば、引くことを選択できる。世界トップクラスの高さを生かした、攻守両面におけるゴール前の強さが、戦術の汎用性を引き出しているわけだ。
 
 それを踏まえるとゴール前に弱みがあり、アジア最終予選でさえ引いて守り切れない日本が、簡単に真似できるスタイルではない。
 
 親近感が湧くのは、決勝で敗れたチリの戦い方だ。守備的MFでもプレーする171センチのガリー・メデルをCBに起用し、その相棒のゴンサロ・ハラもSBや守備的MFを兼ねるタイプ。チリはCBの専門家を使わず、ハイプレスとポゼッションで敵陣に相手を押し込むサッカーを展開した。スタメンの平均身長は約175センチと小柄だが、自陣深くまで引かないスタイルなので問題はない。アグレッシブさと狭いスペースでボールを動かす技術が彼らの生命線だ。
 
 鍵を握るのは4-3-1-2の中盤。両SBが高い位置に構えるため、ダイヤモンド型の中盤が、間のポジションを埋めて緊密さを保たなければならない。彼らは2CBをサポートしてボールを運び、守備でもプレスをかけ続け、敵陣でゲームを制圧する。なによりハードワークが求められ、身体的にも負担が大きい。
 
 翻って日本代表でも、井手口陽介のような球際の強さ、技術、速さを兼ね備えた中盤のハードワーカーが、あるいは昌子源のような広いスペースをカバーできるスピード豊かなDFが頭角を現わしてきた。チリを手本としたサッカーを実現できる人材が増えているのは確かだろう。
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