3バックにはデメリットと対処法は?
ただ、セントラルMFに関していえば、従来の4-1-4-1でもさほど問題は大きくなかった。そのなかで、3-4-3が現在のような広まりを見せているのは、SBやウイングも役割過多となっていたからだ。
2000年代初頭までなら、SBに求められるのは、大雑把に言ってしまえば、運動量で前方に位置する味方をサポートしつつ、守備での対人戦で負けないことだった。
しかし、守備戦術の激的な進化により、彼らの攻撃面での仕事は増した。ビルドアップや質の高いクロスだけでなく、個人技で敵ボックス内へ侵入することも求められるようになったのだ。
それでいてプレミアでは、相変わらず、球際でのフィジカルを求められる。一部のワールドクラスを除けば、全てをパーフェクトにこなすことは不可能だ。
ウイングも同様である。サイドに張り出し、ドリブル突破からクロスさえ送れば、ある程度評価された時代は終わり、現代サッカーではゲームメイクからフィニッシュまで、とりわけ攻撃面で求められる役割は増えている。
しかし、3-4-3のウイングバックでなら、空中戦を3バックの両脇がカバーし、中央の崩しはシャドーストライカーがこなしてくれる。これでサイドの選手の負担は大幅に軽減された。
空中戦や守備に不安を抱えるSB、スピードはあるものの人が密集する中央でのプレーが苦手なウイングなど、イングランドに多い香車型の選手たちが輝きを取り戻した。ずば抜けた突破力を持ちながらも、崩しのアイデアが乏しかったヴィクター・モーゼスが、チェルシーで復活を遂げたのは、今思えば必然だと言える。
ただし、3バック導入にもデメリットはある。ビルドアップのタスクが少なく、マンツーマン寄りの4バックに英国系DFは慣れきっているため、足下の技術やゾーンで守る感覚を持った選手が少ない点だ。
ただ、そうしたボトルネックに対してプレミアリーグ各クラブは、多額の移籍金を支払って最適な選手を迎え入れ、さらに成長過程にある若手CBやサッカーIQの高いボランチを起用するなど、あの手この手でクリアしようとしている。
こうした昨今の潮流を見る限り、4-2-3-1や4-4-2と「キック&ラッシュ」をこよなく愛したイングランドに変革が起きているのは言うまでもない。より緻密な3バックを活用したチームがタイトルを独占する――。そんな未来は、もう目の前まで来ているのかもしれない。
文:内藤秀明 text by Hideaki Naito
2000年代初頭までなら、SBに求められるのは、大雑把に言ってしまえば、運動量で前方に位置する味方をサポートしつつ、守備での対人戦で負けないことだった。
しかし、守備戦術の激的な進化により、彼らの攻撃面での仕事は増した。ビルドアップや質の高いクロスだけでなく、個人技で敵ボックス内へ侵入することも求められるようになったのだ。
それでいてプレミアでは、相変わらず、球際でのフィジカルを求められる。一部のワールドクラスを除けば、全てをパーフェクトにこなすことは不可能だ。
ウイングも同様である。サイドに張り出し、ドリブル突破からクロスさえ送れば、ある程度評価された時代は終わり、現代サッカーではゲームメイクからフィニッシュまで、とりわけ攻撃面で求められる役割は増えている。
しかし、3-4-3のウイングバックでなら、空中戦を3バックの両脇がカバーし、中央の崩しはシャドーストライカーがこなしてくれる。これでサイドの選手の負担は大幅に軽減された。
空中戦や守備に不安を抱えるSB、スピードはあるものの人が密集する中央でのプレーが苦手なウイングなど、イングランドに多い香車型の選手たちが輝きを取り戻した。ずば抜けた突破力を持ちながらも、崩しのアイデアが乏しかったヴィクター・モーゼスが、チェルシーで復活を遂げたのは、今思えば必然だと言える。
ただし、3バック導入にもデメリットはある。ビルドアップのタスクが少なく、マンツーマン寄りの4バックに英国系DFは慣れきっているため、足下の技術やゾーンで守る感覚を持った選手が少ない点だ。
ただ、そうしたボトルネックに対してプレミアリーグ各クラブは、多額の移籍金を支払って最適な選手を迎え入れ、さらに成長過程にある若手CBやサッカーIQの高いボランチを起用するなど、あの手この手でクリアしようとしている。
こうした昨今の潮流を見る限り、4-2-3-1や4-4-2と「キック&ラッシュ」をこよなく愛したイングランドに変革が起きているのは言うまでもない。より緻密な3バックを活用したチームがタイトルを独占する――。そんな未来は、もう目の前まで来ているのかもしれない。
文:内藤秀明 text by Hideaki Naito