中盤で鍵を握るのが副主将のジロット。
ブラジル全国リーグは、5月中旬に幕を開けた。開幕戦は強豪コリンチャンスとアウェーで引き分け(1-1)、2節は王者パルメイラスにホームで勝利(1-0)。さらに連勝を収め、4節終了時点でクラブ史上初めて首位に立ち、シャペコの町は沸きに沸いた。
ところが、5節のグレミオ戦(ホーム)は守備のミスが続出し、3-6と大敗。この試合を含めた以降の6試合は1勝5敗(8得点・18失点)と成績が急降下し、10節を終えると順位は13位まで落ちてしまう。
シーズン序盤に比べると、攻守両面で連携が深まり、選手層も厚みを増してチーム力は上がっている。にもかかわらず6月に入ってから失速した原因は、対戦相手に研究されたからだろう。開幕以来、システムはほぼ一貫して4-3-3を採用。中盤で激しく守り、ボールを奪うとSBとウイングが連携してサイドを突破し、そこからのクロスで得点を狙ってきた。
それゆえ攻撃時はSBが敵陣に上がっているケースが多く、その背後を素早く突かれるとカバーが間に合わず、重大なピンチを迎えてしまう。中盤でボールをキープし、相手守備陣の穴を見つけて決定的なパスを供給できる選手が少なく、攻撃がサイドに偏るバランスの悪さが背景にある。つまり、攻撃面の欠陥が守備にも影響しているのだ。
打開策としては、4-3-3以外のオプションを持つことがひとつ。また中盤に攻守両面で貢献できる選手を並べ、個の能力の不足を組織で補えば、バランスの悪さは多少なりとも解消できるかもしれない。あとは主力、そして若手たちの成長による戦力の底上げが、今後はいっそう求められる。
守備の柱として期待されるのが、24歳のCBオタビオ。195センチの長身で空中戦に強く、身体能力は抜群。まだトップレベルでの経験が浅く、時折、ポジショニングや技術的なミスを犯すが、状況判断が向上すれば将来のセレソン入りも可能な逸材だ。
中盤はジロット(昨年は京都サンガに在籍)が鍵を握る。大柄で対人守備に滅法強く、足元の技術も高い25歳のボランチだ。州リーグではハットトリックを記録するなど攻撃面でも貢献。副主将を任されており、いずれチームの大黒柱となるべき存在だ。
攻撃陣で最も可能性を感じさせるのが、今年5月に加入したベネズエラ代表MFのルイス・セイハス。技術があり、豊富なアイデアを持つ。今後、周囲との連携を深めて持ち味を存分に発揮すれば、チームの攻撃のオプションが格段に増えるはずだ。
左ウイングのローレンシーも面白い。下部組織出身の21歳は、爆発的なスピードが魅力で、縦への推進力ある。現在はまだ途中出場が多いものの、さらに成長してレギュラー争いを演じるようになれば攻撃陣は厚みが増す。
マンシーニ監督は、「選手全員が攻守両面で有機的に絡むチームを作るのが理想。ここまでの過程は、おおむね予定通り」としながらも、「全国リーグは非常に厳しいコンペティション。戦いながら成長していかなければならない」と前を見据える。
しかし――。7月4日、そのマンシーニ監督が突然解任された。
(第7回につづく)
取材・文:沢田啓明
※ワールドサッカーダイジェスト2017.07.20号より加筆・修正
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【著者プロフィール】
さわだ ひろあき/1986年にブラジル・サンパウロへ移り住み、以後、ブラジルと南米のフットボールを追い続けている。日本のフットボール専門誌、スポーツ紙、一般紙、ウェブサイトなどに寄稿しており、著書に『マラカナンの悲劇』、『情熱のブラジルサッカー』などがある。1955年、山口県出身。
ところが、5節のグレミオ戦(ホーム)は守備のミスが続出し、3-6と大敗。この試合を含めた以降の6試合は1勝5敗(8得点・18失点)と成績が急降下し、10節を終えると順位は13位まで落ちてしまう。
シーズン序盤に比べると、攻守両面で連携が深まり、選手層も厚みを増してチーム力は上がっている。にもかかわらず6月に入ってから失速した原因は、対戦相手に研究されたからだろう。開幕以来、システムはほぼ一貫して4-3-3を採用。中盤で激しく守り、ボールを奪うとSBとウイングが連携してサイドを突破し、そこからのクロスで得点を狙ってきた。
それゆえ攻撃時はSBが敵陣に上がっているケースが多く、その背後を素早く突かれるとカバーが間に合わず、重大なピンチを迎えてしまう。中盤でボールをキープし、相手守備陣の穴を見つけて決定的なパスを供給できる選手が少なく、攻撃がサイドに偏るバランスの悪さが背景にある。つまり、攻撃面の欠陥が守備にも影響しているのだ。
打開策としては、4-3-3以外のオプションを持つことがひとつ。また中盤に攻守両面で貢献できる選手を並べ、個の能力の不足を組織で補えば、バランスの悪さは多少なりとも解消できるかもしれない。あとは主力、そして若手たちの成長による戦力の底上げが、今後はいっそう求められる。
守備の柱として期待されるのが、24歳のCBオタビオ。195センチの長身で空中戦に強く、身体能力は抜群。まだトップレベルでの経験が浅く、時折、ポジショニングや技術的なミスを犯すが、状況判断が向上すれば将来のセレソン入りも可能な逸材だ。
中盤はジロット(昨年は京都サンガに在籍)が鍵を握る。大柄で対人守備に滅法強く、足元の技術も高い25歳のボランチだ。州リーグではハットトリックを記録するなど攻撃面でも貢献。副主将を任されており、いずれチームの大黒柱となるべき存在だ。
攻撃陣で最も可能性を感じさせるのが、今年5月に加入したベネズエラ代表MFのルイス・セイハス。技術があり、豊富なアイデアを持つ。今後、周囲との連携を深めて持ち味を存分に発揮すれば、チームの攻撃のオプションが格段に増えるはずだ。
左ウイングのローレンシーも面白い。下部組織出身の21歳は、爆発的なスピードが魅力で、縦への推進力ある。現在はまだ途中出場が多いものの、さらに成長してレギュラー争いを演じるようになれば攻撃陣は厚みが増す。
マンシーニ監督は、「選手全員が攻守両面で有機的に絡むチームを作るのが理想。ここまでの過程は、おおむね予定通り」としながらも、「全国リーグは非常に厳しいコンペティション。戦いながら成長していかなければならない」と前を見据える。
しかし――。7月4日、そのマンシーニ監督が突然解任された。
(第7回につづく)
取材・文:沢田啓明
※ワールドサッカーダイジェスト2017.07.20号より加筆・修正
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【著者プロフィール】
さわだ ひろあき/1986年にブラジル・サンパウロへ移り住み、以後、ブラジルと南米のフットボールを追い続けている。日本のフットボール専門誌、スポーツ紙、一般紙、ウェブサイトなどに寄稿しており、著書に『マラカナンの悲劇』、『情熱のブラジルサッカー』などがある。1955年、山口県出身。