来日記念!【シャペコエンセ連載・復興への軌跡/最終回】マンシーニ監督解任の真相と浦和レッズ戦展望

カテゴリ:沢田啓明

ワールドサッカーダイジェスト編集部

2017年08月14日

クラブ首脳が抱いた危機感。

エウトロピオ新監督のインタビューに成功。自身の目指すスタイルや浦和レッズ戦の意気込みを語ってくれた。 写真:沢田啓明

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 2016年11月28日に起きた事件を、覚えている方は多いはずだ。ブラジルの1部リーグに所属するクラブ、シャペコエンセの一行を乗せた飛行機が墜落し、多くの尊い命が犠牲となったあの大事件だ。
 
 あれから、およそ9か月が経った。クラブ存続の危機に直面したシャペコエンセはしかし、着実に復興へと進んでいる。そして8月15日には、コパ・スダメリカーナ王者として臨むスルガ銀行チャンピオンシップで、浦和レッズと対戦する。
 
 シャペコエンセの来日を記念してお届けするのは、現地在住のサッカージャーナリスト、沢田啓明氏が飛行機事故からの歩みを追ったドキュメンタリー連載だ。最終回は、突然断行された政権交代の真相に迫る。ヴァグネル・マンシーニ監督は、なぜ解任されたのか。そして、浦和レッズとはどう戦うのか――。
 
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 今年1月から采配を振るっていたヴァグネル・マンシーニ監督が7月4日、解任された。
 
 ブラジル全国リーグ第11節で、リオの名門フルミネンセとアウェーで対戦。終盤まで1点のリードしながら、アディショナルタイムの失点で3-3のドローに持ち込まれ、4勝1分け5敗の15位(20チーム中)まで順位を落とした翌日のことだった。
 
 この一戦を含む15節までの5試合は1分け4敗。成績が悪化していたのは事実ながら、敵地で強豪相手に引き分けという結果は決して悪いものではない。この段階での監督交代には驚いたし、率直に言って理解に苦しんだ。
 
 ブラジルは、世界のサッカー大国のなかで最も頻繁に監督の首を挿げ替える国のひとつだ。昨シーズンの全国リーグ1部では、20クラブ中15クラブが監督を交代している(うち8クラブは複数回)。
 
 シャペコエンセは無借金経営を続ける優良クラブで、給料の遅配も絶対にない。日本では当たり前かもしれないが、ブラジルや南米ではむしろ例外的だ。そういった意味では稀有なクラブである。しかし、こと監督人事に関しては忍耐強さに欠ける。2014年に3度、15年と16年に一度ずつ指揮官を変えており、今回のマンシーニの解任についても、当初は「ブラジルのクラブ特有の堪え性のなさが出てしまったのか」と考えていた。
 
 マンシーニは中堅クラブのパウリスタを率いた05年にコパ・ド・ブラジルを制覇し、その後はサントス、クルゼイロといった強豪クラブを指揮した経歴の持ち主だ。昨年の12月上旬にシャペコエンセの監督に就任した際には、「事故で他界した前監督、選手らの遺志を継いで、再び市民に誇りと喜びを与えられるチームを作りたい」と抱負を語っていた。筆者が直接インタビューして感じたのは、「知的で冷静な人物」という印象だ。
 
 主に用いていたシステムは4-3-3。3人のボランチが中盤で激しく守り、攻撃は手数をかけずにサイドへ展開し、サイドバック(SB)とウイングの連携で崩してクロスを入れる。これが基本の戦術だった。
 
 当初は攻守両面で機能性を欠いていたものの、次第に連携が深まり、州リーグは2年連続6度目の優勝を達成。クラブ創立以来、初めて参戦したコパ・リベルタドーレスは、1次リーグで出場停止中だった選手を誤って起用したペナルティーで勝点を剥奪されて敗退したものの(これは監督ではなくフロントの失態)、試合内容は決して悪くはなかった。

 全国リーグも序盤は絶好調だった。3~4節はクラブ史上初めて首位に立つ。しかし、その後は対戦相手に戦術を研究され、SBが攻撃参加した背後を執拗に突かれて失点が急増。5節グレミオ戦で6失点、9節フラメンゴ戦(アウェー)で5失点を喫し、10節アトレチコ・ミネイロ戦はBチームで臨んできた相手に0-1で敗れている。
 
「この時点でクラブ首脳は解任の腹を決めており、フルミネンセ戦の結果はあまり関係なかった」

 それが地元記者の見立てだ。
 
 クラブの内情に詳しい人物の情報を総合すると、この解任にはさまざまな側面があった。一つは、マンシーニの戦術が単調でバリエーションに乏しく、一部の選手から不満や疑念の声が挙がっていたらしいこと。また、メンバーを固定して戦っていため、下部組織出身の若手にはチャンスが与えられず、そんな指揮官の姿勢を快く思わない人間がフロントにいたという。
 
 結果がついてきていれば、それでもやり過ごせただろう。だが、成績は急激に悪くなり、とりわけ失点が増大した点にクラブ首脳が危機感を抱いたという。これが解任に至った真相のようだ。
 

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