勢力分布図が変化した今季のブンデスリーガで最も期待を裏切った2チーム

カテゴリ:連載・コラム

中野吉之伴

2017年05月26日

相手の脅威となっていた攻撃が全く怖くなくなってしまった…

5月は白星に終わったシャルケに対し、レバークーゼンは最終節で大勝を飾り、希望を感じさせた。期待のハフェルツは(写真)この試合で初ゴール、しかも決勝点を含む2ゴールを挙げた。 (C) Getty Images

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 一方のレバークーゼン。ロジャー・シュミット監督が3年かけて取り組んできたサッカーは、見る影もなくなっていた。
 
 タイフン・コルクトへの監督交代も大きな刺激にはならず、残留するために目の前の試合に勝つことに集中せざるを得なくなった。リスクを冒さず、ミスを避けるような消極的なプレーばかりになってしまえば、相手も怖くはない。
 
 積極的に前からプレスを仕掛け、素早い攻撃で相手ゴールを急襲するサッカーを志向したシュミット政権時には、前への推進力が何より重要視された。そのため、最後のほうではボールの取りどころが雑になり、焦ってプレスを仕掛けては失点を重ねることが多くなってしまった。
 
 これを踏まえて、コルクトが守備位置を低くし、守備力があり、経験ある選手を多く起用した気持ちも、理由も分かる。実際に失点は減った。
 
 だが、あれだけ相手の脅威となっていた攻撃は、全く怖くなくなってしまった。起用された選手が大きく変わったわけではない。だが、戦い方が整理されないまま、選手任せになってしまった。
 
「ここで勝負だ!」という局面認知ができていないから、どこか出足が鈍り、突破ができない。「間違いなくチャンスになる」というイメージがないままラストパスを狙うので、チャンスでもボールは繋がらないし、逆に相手にカウンターをプレゼントしてしまう……。
 
 シーズン開幕の頃には、ドイツ代表に6選手が選ばれたことからも分かるように、抱える選手のクオリティーは間違いなく高い。また、17歳のカイ・ハフェルツの活躍は素晴らしかったし、来シーズンに向けて大きな希望となった。
 
 残留が確定したことで、ようやく肩から重荷が下り、プレッシャーから解放された後で迎えた最終節のヘルタ戦(敵地で6-2の大勝)では、プレーの一つひとつから選手の意志と喜びが感じられた。自分たちもサッカーができるんだ、という誇りと気概を改めて見せてくれた。
 
 来シーズンの監督は現時点では未定だ。今オフ、クラブには自分たちのフィロソフィーからプレーコンセプトまでを考慮し、じっくり時間をかけて話し合い、最適な監督を連れて来てほしいものである。
 
「ポテンシャルは高いチーム」という称号だけでは、あまりにもったいなさ過ぎる。
 
文:中野 吉之伴
 
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。
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