チームメイトのほとんどが郊外の静かな丘陵地帯に居を構えてひっそりと落ち着いた生活を送る中、街のど真ん中の歴史的建造物の屋上にあるプール付きのペントハウスを借りて、美人モデルのガールフレンドとの日常生活や、故郷バイーア発のブラジリアン・ヒットソングに合わせて歌い踊る姿をインスタグラムにアップしつづけるダニ・アウベスには、ユーベのチームメイトも当初は戸惑ったようだ。
 
　モナコとの第１レグ終了後のミックスゾーンでは、ジョルジョ・キエッリーニがこんなコメントを残している。
 
「ダニは本当に陽気で、いつも微笑みを絶やさない。時速300キロで毎日を生きているような男だよ。僕たちの文化からすればちょっとクレイジーだけどね。最初はまるで異邦人だったよ。違う言葉を話して、違うサッカーをプレーしている感じだった。僕たちも彼も、お互いの妥協点を見出すのにかなり苦労したからね」
 
　バルサのロッカールームをファンキーでハッピーなブラジル音楽とダンスで満たしていたダニ・アウベスにとって、しんと静まった空気の中で一人ひとりがヘッドフォンで自分の好きな音楽を聞いているユーベのロッカールームは衝撃だったようだ。
 
　ロッカールームにスピーカーを持ち込み、同じ南米（コロンビア）出身の陽気なファン・ギジェルモ・クアドラードと一緒に踊ってチームを活気づけようとしたものの、そうした試みがすべてのチームメイトに歓迎されたわけではなかった。
 
　ピッチ上でも当初は、戦術的秩序を無視して持ち場の右サイドから中央に入り込んだり、ボールを持ち過ぎて攻撃をスローダウンさせた末に嫌な形で奪われたり、守備への戻りが遅れてサイドに穴を空けたりといった場面が目立ち、なかなかチームのメカニズムとプレーが噛み合わなかった。
 
　今シーズンのユーベにとって最悪のゲームだった11月28日の14節ジェノア戦（１-３で敗戦）での接触プレーで腓骨を骨折し、２か月の離脱を強いられた時には、キャリア末期で衰えが隠せないビッグネームがセリエAに何の足跡も残せないままいつの間にか消えているというパターンに陥って終わるだろう、という意地の悪い観測も目に付いた。例えば、２年前にローマに移籍したアシュリー・コール（現LAギャラクシー）のようにだ。