リーガ2部降格寸前のグラナダ……クラブの迷走がチームを崩壊させた典型例

カテゴリ:連載・コラム

工藤拓

2017年04月27日

威勢の良い未熟な指揮官はすぐに弱音を吐き、言い訳し始めた…

困難にミッションに挑んだアダムスだったが、彼の経験値では手に負ええず、状況をさらに悪化させてしまった……。 (C) Getty Images

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 言わずと知れた、アーセナルの伝説的キャプテンである元イングランド代表CBは、就任発表の場で「私は40年間の経験とともに、選手たちの尻を蹴飛ばし、残る7試合を全て勝つためにやって来た」と意気込みを口にしていた。
 
 だが、スペイン語が話せず、スペインでのプレー経験も皆無で、何より数か月でクビになったポーツマス以外では、イングランド4部チームとアゼルバイジャンのクラブしか率いたことがないような監督が、残り7試合の時点で降格圏に沈むチームを立て直せるわけがなかった。
 
「攻撃的にプレーする。ファンは私の頭にあるプレースタイルに感謝するはずだ」
「明日は失うものなど何もない。戦うのみだ」
 
 威勢の良い言葉が相次いだ前日会見とは裏腹に、セルタとのデビュー戦は0-3の完敗。続くセビージャ戦(0-2)、マラガ戦(0-2)も、1ゴールも奪えぬまま敗れると、早くもチームに充満する負け犬根性が伝染したか、元闘将の口からは一転して、弱音が漏れ始めた。
 
「うちの選手たちは頑張っているが、技術が足りない」
「クラブはプランニングで多くの失敗を犯した」
「マラガのほうが良いチームだ。ベンチにいたデミチェリスは、うちの全選手より高額な選手だ」
 
 涙を流して悔しさをにじませた選手も少なくなかった試合の直後に、「勝てないのは下手くそな選手たちと、そんな選手を集めたクラブのせいだ」と言い訳するような監督に、誰がついて行こうと思うだろうか。
 
 しまいには、「私は来シーズンに向けて、競争力のあるチームを構築するために来た」とも……。最初から、今シーズンの残留は諦めていたと認めたも同然である。
 
 この試合の当日、クラブは噂されていたマノロ・サルバドールのSD就任を正式に発表した。倒産寸前だったレバンテを立て直し、UEFAカップ(現ヨーロッパリーグ)出場などの躍進に導いた敏腕SDとの契約は、間違いなくグラナダにとって良いニュースである。
 
 それでも、クラブの方向性が二転三転しているうちは、いくら優秀な人材を連れて来たところで、望む結果を手にすることは難しいだろう。良い選手を11人並べても、チームとして機能しなければ試合に勝てないのがサッカーだということを、彼らは今一度、思い出す必要がある。
 
文:工藤拓
 
【著者プロフィール】
くどう・たく/1980年、東京都生まれ。桐光学園高、早稲田大学文学部卒。三浦知良に憧れて幼稚園からボールを蹴り始め、テレビで欧州サッカー観戦三昧の日々を送った大学時代からフットボールライターを志す。その後EURO2004、2006年ドイツ・ワールドカップの現地観戦を経て、2006年よりバルセロナへ移住。現在は様々な媒体に執筆している。
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