時代と状況に合わせてバージョンアップし、時に原点に立ち返る

今シーズンの昇格組はイキがいい! 15日にはライプツィヒと対決するフライブルク。前回(12節/写真)はホームで1-4と大敗しており、雪辱なるかが注目される。 (C) Getty Images
予算的に他クラブの主力級を獲得することはできないが、自前で全ての選手を育てることもできない。だからこそ、他クラブへのスカウティングにも独自性がなければならない。狙いは将来性があり、出場機会を欲するタレントだ。
現在、チームの主力として活躍する選手の多くは、かつての所属クラブで悔しい思いをしてきている。
最近、ゴールを量産しているFWフロリアン・ニーダーレヒナーはマインツで、アシストランキングでトップを争うMFヴィンチェンツォ・グリフォはホッフェンハイムで、そして怪我から復帰し、抜群の安定感で守備を支えるDFマルク=オリバー・ケンプフはフランクフルトで、チャンスを貰えなかった。
ここに行けば成長できるという信頼と実績がフライブルクというクラブにあることも、彼らにとっては魅力的だったはずだ。
ユースアカデミーのシュタイエルト・ディレクターは、フライブルクの目標を「常にドイツトップ20のなかに入り続けること」と話してくれたことがあった。
2部リーグに落ちることは、彼らにとって負けではない。落ちたとしてもすぐに昇格できるチーム力を維持することに尽力するのが重要なのだ。
そのためには継続性が重要であり、だからこそ歴代監督のほとんどが長期政権に成功している。フィンケの16年間は異次元レベルだとしても、現監督のクリスティアン・シュトライヒも5年4か月と、今シーズンのブンデスリーガの監督では最長である。
シュトライヒは、前述したショートパス中心のフライブルクらしさをベースにしながら、1部リーグで戦うために色々なところで変化を加えている。
ロングボールの有効活用も、そのひとつである。
守備陣からのビルドアップの際、相手チームは早めのプレスでその攻撃の起点を抑えようとしてくる。そして繋ぐことにこだわるあまり、不用意なミスパスから失点を喫するのが、このチームの悪癖でもあった。
そこで、前からプレスに来る相手守備陣の裏スペースを使うことで、相手の狙いを外しにいく手段を加えた。
重要なのは、自分たちでコントロールしてボールを前に運ぶということ。偶然任せに蹴り込むのではなく、どのようにセカンドボールを拾うかなどを整理することで、攻撃手段のひとつとして確立することができるのだ。
自分らしさを保ちながら、時代と状況に合わせてバージョンアップしていく。うまくいかなければ、自分たちの原点に立ち返る――。
今シーズン終了時、どの順位にフライブルクがいるかは分からないが、何位かに関係なく、彼らの戦いは間違いなく成功裡に終わるはずだ。
文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/ドイツ・フライブルク在住の指導者。2009年にドイツ・サッカー連盟公認のA級コーチングライセンス(UEFAのAレベルに相当)を取得。SCフライブルクでの研修を経て、フライブルガーFCでU-16やU-18の監督、FCアウゲンのU-19でヘッドコーチなどを歴任。2016-17シーズンからFCアウゲンのU-15で指揮を執る。1977年7月27日生まれ、秋田県出身。
現在、チームの主力として活躍する選手の多くは、かつての所属クラブで悔しい思いをしてきている。
最近、ゴールを量産しているFWフロリアン・ニーダーレヒナーはマインツで、アシストランキングでトップを争うMFヴィンチェンツォ・グリフォはホッフェンハイムで、そして怪我から復帰し、抜群の安定感で守備を支えるDFマルク=オリバー・ケンプフはフランクフルトで、チャンスを貰えなかった。
ここに行けば成長できるという信頼と実績がフライブルクというクラブにあることも、彼らにとっては魅力的だったはずだ。
ユースアカデミーのシュタイエルト・ディレクターは、フライブルクの目標を「常にドイツトップ20のなかに入り続けること」と話してくれたことがあった。
2部リーグに落ちることは、彼らにとって負けではない。落ちたとしてもすぐに昇格できるチーム力を維持することに尽力するのが重要なのだ。
そのためには継続性が重要であり、だからこそ歴代監督のほとんどが長期政権に成功している。フィンケの16年間は異次元レベルだとしても、現監督のクリスティアン・シュトライヒも5年4か月と、今シーズンのブンデスリーガの監督では最長である。
シュトライヒは、前述したショートパス中心のフライブルクらしさをベースにしながら、1部リーグで戦うために色々なところで変化を加えている。
ロングボールの有効活用も、そのひとつである。
守備陣からのビルドアップの際、相手チームは早めのプレスでその攻撃の起点を抑えようとしてくる。そして繋ぐことにこだわるあまり、不用意なミスパスから失点を喫するのが、このチームの悪癖でもあった。
そこで、前からプレスに来る相手守備陣の裏スペースを使うことで、相手の狙いを外しにいく手段を加えた。
重要なのは、自分たちでコントロールしてボールを前に運ぶということ。偶然任せに蹴り込むのではなく、どのようにセカンドボールを拾うかなどを整理することで、攻撃手段のひとつとして確立することができるのだ。
自分らしさを保ちながら、時代と状況に合わせてバージョンアップしていく。うまくいかなければ、自分たちの原点に立ち返る――。
今シーズン終了時、どの順位にフライブルクがいるかは分からないが、何位かに関係なく、彼らの戦いは間違いなく成功裡に終わるはずだ。
文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/ドイツ・フライブルク在住の指導者。2009年にドイツ・サッカー連盟公認のA級コーチングライセンス(UEFAのAレベルに相当)を取得。SCフライブルクでの研修を経て、フライブルガーFCでU-16やU-18の監督、FCアウゲンのU-19でヘッドコーチなどを歴任。2016-17シーズンからFCアウゲンのU-15で指揮を執る。1977年7月27日生まれ、秋田県出身。