「未知の5分間」を経験し、鹿島はまた強くなる

カテゴリ:Jリーグ

清水英斗

2016年12月20日

あの5分が勝負だった。凌いでいれば、どうなったかはわからない。

C・ロナウドにPKを決められ同点に追いつかれてしまった。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

画像を見る

 気になるワンプレーだ。昌子とすれば、攻める気満々のレアルに対し、うかつに出ると危ない、というセンサーが働いただろう。つなぐのはリスクが大きいエリア。西には簡単にクリアしてほしかったはず。
 
 逆に、西はいつも通りにやろうとした。残り時間は35分ある。フリーでボールを奪えた。打たれ続けるには長すぎる。西の判断も間違いとは言えない。
 
 そもそも攻める気満々の全力レアルが、どれくらい恐いのか? どこまでならリスクを犯せるのか? そこが未体験ゾーンだ。柴崎がカルバハルに置き去りにされたとき、未知の生物が目の前に迫ってくる、そんな感覚があったのではないか。試合巧者の鹿島といっても、経験していないものには、どう対応していいのかわからない。慎重になる者、変わらない者に分かれた。
 
 そして2分後、58分の場面だ。カルバハルが中から外へ走り抜け、左サイドバックの山本脩斗を引き出すと、山本と昌子の間に空いたスペースへ、バスケスが、やはりベンゼマとのワンツーで侵入。柴崎はここでもう一度置き去りにされ、2ボランチも、モドリッチとクロースへの意識が強く、後ろをカバーできず。抜け出したバスケスを、山本と柴崎が倒したPK判定は、妥当なものだった。
 
 あの鹿島が、一瞬ふわっと戸惑った。そうは言っても、わずか5分程度のこと。ここを凌げば、レアルの圧力に対して修正し、守備のリズムができたはず。それが鹿島であるし、実際に2-2となった後は、柴崎をボランチへ移し、身体能力の高いファブリシオを2トップに入れた石井正忠監督の采配もあり、試合が落ち着いた。
 
 本当に、あの5分が勝負だった。凌いでいれば、どうなったかはわからない。しかし、凌がせてくれなかった。それもまた、レアルだ。
 
 鹿島にとって、この経験は先につながる。少なくとも次に戦うレアルは、未知の生物ではないのだから。

文:清水英斗(サッカーライター)
【関連記事】
【セルジオ越後】「レアルに善戦」で満足しちゃいけない。鹿島に与えられた宿題は、来季のACL優勝だ
柴崎の移籍報道が欧州発信で過熱!? スペイン有力紙も「あと13日間でフリーに」と動向を報じる
【クラブW杯決勝|採点&寸評】レアル・マドリー×鹿島|延長戦で違い見せつけたC・ロナウド。2得点の柴崎もアイデア溢れるプレーぶり
現役Jリーガーが選んだ今季の「MVP」は? J1全18クラブ、計90選手にアンケート!
クラブW杯決勝後にハメスが移籍志願…「失望した。届いているオファーを検討したい」

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト なでしこJに続け!
    4月10日発売
    U-23日本代表
    パリ五輪最終予選
    展望&ガイド
    熾烈なバトルを総力特集
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト ガンナーズを一大特集!
    5月2日発売
    プレミア制覇なるか!?
    進化の最終フェーズへ
    アーセナル
    最強化計画
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 高校サッカーダイジェストVo.40
    1月12日発売
    第102回全国高校選手権
    決戦速報号
    青森山田が4度目V
    全47試合を完全レポート
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ