――オファーをもらった時の、正直な感想は？
 
　自分のようなベテランと呼ばれる選手へのオファーは、簡単ではないと思います。ただ、Ｊ２降格という結果になり、１年でＪ１に戻って本来の姿に戻すという話を聞き、純粋に選手として評価してくれたこと、「まだまだやれるところを証明してほしい」といってくれたことは嬉しかった。最初のイメージは、正直驚きました。
 
――いつ頃、オファーの話が来たのですか？
 
オファーを頂いたのは、天皇杯の鳥栖戦前後だったと思います。
 
――名古屋の監督に風間八宏氏の就任が有力視されていますが。
 
　まだ正式な発表もないので、コメントするのは難しいですね。ただ、風間監督はここ数年、川崎で主導権を握るチームを作られていますし、今季は年間勝点２位のチームを導いた監督です。また、現役時代はキャプテンとして広島をステージ優勝に導いた偉大な先輩でもあるので、そういう方から指導を受けることができれば、学べることはたくさんあると感じています。
 
――名古屋のJ１復帰は、クラブにとってはある意味でノルマと言えるものかもしれません。かつて広島でも、１年でＪ１復帰させた経験を佐藤選手は持っていますが、昇格には何が必要でしょう？
 
　当時の広島と今の名古屋を、単純比較はできません。ただ、ひとつ言えるのは、クラブと選手、そしてサポーターがひとつにまとまって戦わなければ、１年での復帰は難しい。長丁場で苦しい時はありますが、そこで崩れるクラブが１年でJ１復帰ができていない。2008年の広島は、最初に上手く行かなかった時でも、我慢しながらポイントを積みあげて、その後Ｊ１優勝につながるベースを作れたと思っています。
 
――広島でどういう成長を遂げることができましたか？
 
　広島に来るまでは、自分がゴールすることしか考えていない、わがままなストライカーでした。でも、広島でいろんな経験を積むことで、苦しい時もみんなと一緒に戦ってきたことで、少しずつ大人のサッカー選手になれたと感じています。たくさんの素晴らしい選手やスタッフと一緒に仕事をできたことは恵まれているなと感じます。
 
――広島での思い出は？
 
　一番は、2012年の初優勝ですが、そのベースになった2008年のＪ２でのシーズンが思い出深い。その前年、Ｊ２降格で広島の人々に悲しい思いをさせてしまった。だから2008年は、スタジアムにまったくサポーターが来てくれないのではないかという恐怖心がありました。
 
でも、そういう苦しい時に、広島の人々は支えてくれた。それがこのクラブの大きな成果になったと思います。良い時は拍手を送ってくれると思いますが、苦しい時にどれだけ寄り添ってくれるかというのは、人間の本質が見える。その時に、広島に来てよかったな、広島で育ちたかったなと思いました。３人の子どもたちは広島育ちだし、広島弁も上手い。そういう子どもたちを見ると少し嫉妬する部分もあります（苦笑）。
 
　とにかく、2008年のＪ２での闘いを、広島のみなさんと一緒に戦えたことが、その後の大きな成果につながったと思っています。