混迷したインテル新監督人事…ピオーリ招聘までの舞台裏とは?

カテゴリ:メガクラブ

手嶋真彦

2016年11月09日

現地では「常識的な選択」と好意的に受け止められた。

トヒル会長(手前左)と張近東オーナー(手前中央)は、最終的にアウジリオSDらイタリアで実務を担う幹部の意見を取り入れた。なお、ボーリングブロークCEO(手前右)は、デブール招聘の責任を取らされる形で首を切られた。(C)Getty Images

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 ジョーラブシャンの次善の候補が、実際に“面接”を受けた3人の1人、ジャンフランコ・ゾーラ(前アル=アラビ監督)だった。往年の名ファンタジスタで、1994年ワールドカップにも出場している元イタリア代表FWであれば、知名度という条件はクリアできる。
 
 しかし、監督としての最高成績はウェストハムを率いた08-09シーズンのプレミアリーグ9位(4節からの途中就任)にすぎず、経験値でも欧州のトップリーグで采配を振るった計83試合(プレミアリーグ73試合、セリエA10試合)は、リーガ・エスパニョーラ239試合で指揮を執ったマルセリーノに大きく劣る。ゾーラは途中就任の実績でも、14-15シーズンに汚点を残していた。17節からの10試合で指揮を執ったカリアリは、降格圏から浮上できぬまま、結局セリエBに陥落した。
 
 11月8日にインテルが発表した新監督は、スペイン人のマルセリーノではなく、イタリア人のステーファノ・ピオーリだった。セリエA218試合で采配を振るい、14-15シーズンに前所属のラツィオをCL出場圏内の3位に躍進させた実績では、マルセリーノにも見劣りしない。采配実績はセリエBでの250試合を含めれば468試合となり、リーガ2部を含めて302試合のマルセリーノを上回る。
 
 11-12シーズンのセリエAでは5節終了時点で0勝1分け4敗(19位)のボローニャを途中就任で率いると、残りの33試合を13勝11分け9敗で乗り切り、最終順位を9位に押し上げた。
 
 当初は最有力候補だったピオーリが、同じ51歳のマルセリーノを再逆転し、新監督に指名された背景には、オランダ人のデブール招聘失敗というネガティブな記憶が色濃く残っていた。実を言えばマルセリーノもピオーリと同様に、イタリア人ディレクターチームがリストアップした候補者の1人だった。監督としての純粋な能力では、甲乙つけがたい。
 
 しかし、一歩間違えればセリエB降格もなくはない危機的な状況で、イタリア・サッカーの特殊なカルチャーを知らない別の外国人監督――すなわちマルセリーノ――に、しかも途中就任で巻き返しを託すのは、やはりリスキーだ。イタリア人ディレクターチームが共有していた切迫したこの危機感が、デブール招聘を主導したトヒルに加え、最終決定権を握る中国資本にも土壇場で伝わったのだ。最終候補3人の中で、もっとも地味ながら、もっとも計算できるのがピオーリだった。
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