2人の連携を円滑にするキーマンはピャニッチだ。
さらにシーズン序盤は、やはり新戦力でディバラと仕掛けのプロセスを分担する役割が期待されたミラレム・ピャニッチが、コンディションと戦術適応の問題からスタメンを外れることが多く、中盤と前線を結ぶチャンスメーカーとしての役割をディバラが一手に担わざるをえないという事情があった。これもまた、ディバラがゴール前まで攻め上がってフィニッシュに絡む頻度を下げる要因となっていたのだ。
しかし、ここ最近になって左インサイドハーフとしてスタメン定着を果たしたピャニッチが、トップ下のゾーンでチャンスメークに絡む頻度が上がり、それに伴って前線の流動性も高まるという形で、徐々にではあるが好循環が生まれつつあるようにも見える。
先のエンポリ戦では、ディバラが中盤の組み立てに参加する頻度が下がった分だけプレーエリアが前に上がり、イグアイン、ピャニッチとの連携も高まっていた。
イグアインはここまで公式戦通算9試合で7得点と、9000万ユーロ(約108億円)の移籍金に応える期待通りの結果を出している。
ここにディバラ、そしてピャニッチが絡んでのコンビネーションが機能するようになって、仕掛けとフィニッシュのバリエーションが広がれば、ユーベはさらに多くの決定機を作り出し、得点力はさらに高まるに違いない。もちろん、ディバラがフィニッシュに絡む場面もさらに増えてくるだろう。
ユーベのアッレグリ監督は、決まったメカニズムや攻撃パターンに選手を当てはめるタイプ(アントニオ・コンテ前監督がそうだった)とは異なり、試行錯誤を重ねながら個々のプレーヤーが持ち味を引き出し合える配置やタスクを煮詰めていくタイプ。2010~14年のミラン時代から、序盤は取りこぼしが多いが、チームが一旦固まった後はコンスタントに結果を残すというシーズンが多い理由もまたそこにある。
カルロス・テベス(現ボカ)、アンドレア・ピルロ(現NYシティ)、アルトゥーロ・ビダル(現バイエルン)という主力3人が一気に抜けた昨シーズンは、試行錯誤のプロセスに3か月を費やし、その間は結果が出ずに苦しんだ。10節終了時には12位に沈んでいたほどだ。
しかし今シーズンは、チームとしての完成度はまだ低く、かなりの伸びしろを残しているにもかかわらず、すでに首位に立って独走体制を固めつつある。
イグアインとディバラの連携が本格的に機能しはじめたら、はたしてユーベはどんなチームに化けるのか――。今後の展開が楽しみだ。
文:片野道郎
【著者プロフィール】
1962年生まれ、宮城県仙台市出身。1995年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中だ。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させている。『ワールドサッカーダイジェスト』誌では現役監督とのコラボレーションによる戦術解説や選手分析が好評を博す。
しかし、ここ最近になって左インサイドハーフとしてスタメン定着を果たしたピャニッチが、トップ下のゾーンでチャンスメークに絡む頻度が上がり、それに伴って前線の流動性も高まるという形で、徐々にではあるが好循環が生まれつつあるようにも見える。
先のエンポリ戦では、ディバラが中盤の組み立てに参加する頻度が下がった分だけプレーエリアが前に上がり、イグアイン、ピャニッチとの連携も高まっていた。
イグアインはここまで公式戦通算9試合で7得点と、9000万ユーロ(約108億円)の移籍金に応える期待通りの結果を出している。
ここにディバラ、そしてピャニッチが絡んでのコンビネーションが機能するようになって、仕掛けとフィニッシュのバリエーションが広がれば、ユーベはさらに多くの決定機を作り出し、得点力はさらに高まるに違いない。もちろん、ディバラがフィニッシュに絡む場面もさらに増えてくるだろう。
ユーベのアッレグリ監督は、決まったメカニズムや攻撃パターンに選手を当てはめるタイプ(アントニオ・コンテ前監督がそうだった)とは異なり、試行錯誤を重ねながら個々のプレーヤーが持ち味を引き出し合える配置やタスクを煮詰めていくタイプ。2010~14年のミラン時代から、序盤は取りこぼしが多いが、チームが一旦固まった後はコンスタントに結果を残すというシーズンが多い理由もまたそこにある。
カルロス・テベス(現ボカ)、アンドレア・ピルロ(現NYシティ)、アルトゥーロ・ビダル(現バイエルン)という主力3人が一気に抜けた昨シーズンは、試行錯誤のプロセスに3か月を費やし、その間は結果が出ずに苦しんだ。10節終了時には12位に沈んでいたほどだ。
しかし今シーズンは、チームとしての完成度はまだ低く、かなりの伸びしろを残しているにもかかわらず、すでに首位に立って独走体制を固めつつある。
イグアインとディバラの連携が本格的に機能しはじめたら、はたしてユーベはどんなチームに化けるのか――。今後の展開が楽しみだ。
文:片野道郎
【著者プロフィール】
1962年生まれ、宮城県仙台市出身。1995年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中だ。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させている。『ワールドサッカーダイジェスト』誌では現役監督とのコラボレーションによる戦術解説や選手分析が好評を博す。