• トップ
  • ニュース一覧
  • 【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』其の八十七「就任前からハリルホジッチ監督の危うさは分かっていたはずだ」

【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』其の八十七「就任前からハリルホジッチ監督の危うさは分かっていたはずだ」

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2016年09月08日

アルジェリアに合ったサッカーは日本が目指すモデルなのか!?

この苦難を乗り切るためには? 選手が変わる? 監督が変わる? あるいは代わる? 写真:徳原隆元

画像を見る

 驚くべきことに、UAE戦で指揮官は90分間、この攻守が歪んだ戦い方を何ひとつ修正できていない。もし、相手がカウンター精度の高いチームだったら……。きっと、失点を重ねていただろう。
 
 ザッケローニ監督が率いた日本代表も、無垢さが目立つ集団ではあった。ブラジルW杯では、らしさにこだわってポゼッションに殉じた。
 
 しかし、「左で作り、右で仕留める」という得点パターンを確立。コンフェデレーションズカップでは、イタリアとも真っ向から渡り合った。敗れた事実は動かず、勝負弱さを否定できないが、高い位置でボールを持った時の選手たちは、可能性を示していた。
 
 ハリルホジッチは「アルジェリアをW杯ベスト16に導いた指揮官」という触れ込みだった。「縦の速さ」「デュエル」「インテンシティー」――。好んで使うフレーズは、確かに当時のアルジェリアの代名詞だったかもしれない。しかし……。
 
 果たして、それは日本が目指すモデルなのだろうか?
 
 アルジェリア人選手は長い距離を走れたし、腰も強く、プレー強度も高かった。精度の高いカウンター攻撃によって、ドイツにもひと泡吹かせている。
 
 しかし、日本人選手にスピードやパワーを主眼に求めても、その適正に合う選手は乏しい。同じ視点で日本人を選べば、長所を見抜けず、短所が目に突いてしまう。まさか、「日本人の変異進化を求める」というのでは、あまりに楽観的である。
 
 そして何より、アルジェリアの戦い方にはザック・ジャパンと同じような「脆弱性」があった。それに目を瞑ったままだと……。
 
 9月6日に行なわれたタイ戦では、UAE戦と比べ、日本はチーム全体が前のめりになることも、中央に偏りすぎることもなかった。落ち着いてボールを回し、(先制時のように)外から崩していた。ボールを失った後の強度も高く、その点は改善されていたと言える。
 
 ただ、決定機を幾度も仕留められず、次第に焦りが出て、FIFAランキング120位の相手にバックラインがもたついているようでは、今後に向けて、期待感よりも不安感の方が募る。
 
 これから1年におよぶW杯最終予選は、日本サッカーにとって大きな試練となるかもしれない。
 
文:小宮 良之
 
【著者プロフィール】
小宮 良之(こみや・よしゆき)/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『おれは最後に笑う』(東邦出版)など多数の書籍を出版しており、2016年2月にはヘスス・スアレス氏との共著『「戦術」への挑戦状 フットボールなで斬り論』(東邦出版)を上梓した。
【関連記事】
【日本代表】岡崎が危惧する日本の弱点は"バランス"。「誰かひとりで大きく変えられる問題ではない」
【藤田俊哉の目】いつまでも本田、香川に頼ってはダメ。切り札に好調ハーフナーを試しては?
定期的に現われる”悪い時の香川”。相性が良いのは本田よりも…
【セルジオ越後】タイから2ゴールで満足なの? 今の本田と香川に代わるメンバーなんていくらでもいるよ
【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』其の八十六「守備者の本質を曖昧にする『“攻撃的”をありがたがる』風潮」
【釜本邦茂のガマッチョ診断!】審判どうこう言う前に完璧に相手を潰せなかったのが問題だ!

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト なでしこJに続け!
    4月10日発売
    U-23日本代表
    パリ五輪最終予選
    展望&ガイド
    熾烈なバトルを総力特集
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト 世界各国の超逸材を紹介!
    4月18日発売
    母国をさらなる高みに導く
    「新・黄金世代」大研究
    列強国も中小国も
    世界の才能を徹底網羅!!
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 高校サッカーダイジェストVo.40
    1月12日発売
    第102回全国高校選手権
    決戦速報号
    青森山田が4度目V
    全47試合を完全レポート
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ