アルジェリアに合ったサッカーは日本が目指すモデルなのか!?
驚くべきことに、UAE戦で指揮官は90分間、この攻守が歪んだ戦い方を何ひとつ修正できていない。もし、相手がカウンター精度の高いチームだったら……。きっと、失点を重ねていただろう。
ザッケローニ監督が率いた日本代表も、無垢さが目立つ集団ではあった。ブラジルW杯では、らしさにこだわってポゼッションに殉じた。
しかし、「左で作り、右で仕留める」という得点パターンを確立。コンフェデレーションズカップでは、イタリアとも真っ向から渡り合った。敗れた事実は動かず、勝負弱さを否定できないが、高い位置でボールを持った時の選手たちは、可能性を示していた。
ハリルホジッチは「アルジェリアをW杯ベスト16に導いた指揮官」という触れ込みだった。「縦の速さ」「デュエル」「インテンシティー」――。好んで使うフレーズは、確かに当時のアルジェリアの代名詞だったかもしれない。しかし……。
果たして、それは日本が目指すモデルなのだろうか?
アルジェリア人選手は長い距離を走れたし、腰も強く、プレー強度も高かった。精度の高いカウンター攻撃によって、ドイツにもひと泡吹かせている。
しかし、日本人選手にスピードやパワーを主眼に求めても、その適正に合う選手は乏しい。同じ視点で日本人を選べば、長所を見抜けず、短所が目に突いてしまう。まさか、「日本人の変異進化を求める」というのでは、あまりに楽観的である。
そして何より、アルジェリアの戦い方にはザック・ジャパンと同じような「脆弱性」があった。それに目を瞑ったままだと……。
9月6日に行なわれたタイ戦では、UAE戦と比べ、日本はチーム全体が前のめりになることも、中央に偏りすぎることもなかった。落ち着いてボールを回し、(先制時のように)外から崩していた。ボールを失った後の強度も高く、その点は改善されていたと言える。
ただ、決定機を幾度も仕留められず、次第に焦りが出て、FIFAランキング120位の相手にバックラインがもたついているようでは、今後に向けて、期待感よりも不安感の方が募る。
これから1年におよぶW杯最終予選は、日本サッカーにとって大きな試練となるかもしれない。
文:小宮 良之
【著者プロフィール】
小宮 良之(こみや・よしゆき)/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『おれは最後に笑う』(東邦出版)など多数の書籍を出版しており、2016年2月にはヘスス・スアレス氏との共著『「戦術」への挑戦状 フットボールなで斬り論』(東邦出版)を上梓した。
ザッケローニ監督が率いた日本代表も、無垢さが目立つ集団ではあった。ブラジルW杯では、らしさにこだわってポゼッションに殉じた。
しかし、「左で作り、右で仕留める」という得点パターンを確立。コンフェデレーションズカップでは、イタリアとも真っ向から渡り合った。敗れた事実は動かず、勝負弱さを否定できないが、高い位置でボールを持った時の選手たちは、可能性を示していた。
ハリルホジッチは「アルジェリアをW杯ベスト16に導いた指揮官」という触れ込みだった。「縦の速さ」「デュエル」「インテンシティー」――。好んで使うフレーズは、確かに当時のアルジェリアの代名詞だったかもしれない。しかし……。
果たして、それは日本が目指すモデルなのだろうか?
アルジェリア人選手は長い距離を走れたし、腰も強く、プレー強度も高かった。精度の高いカウンター攻撃によって、ドイツにもひと泡吹かせている。
しかし、日本人選手にスピードやパワーを主眼に求めても、その適正に合う選手は乏しい。同じ視点で日本人を選べば、長所を見抜けず、短所が目に突いてしまう。まさか、「日本人の変異進化を求める」というのでは、あまりに楽観的である。
そして何より、アルジェリアの戦い方にはザック・ジャパンと同じような「脆弱性」があった。それに目を瞑ったままだと……。
9月6日に行なわれたタイ戦では、UAE戦と比べ、日本はチーム全体が前のめりになることも、中央に偏りすぎることもなかった。落ち着いてボールを回し、(先制時のように)外から崩していた。ボールを失った後の強度も高く、その点は改善されていたと言える。
ただ、決定機を幾度も仕留められず、次第に焦りが出て、FIFAランキング120位の相手にバックラインがもたついているようでは、今後に向けて、期待感よりも不安感の方が募る。
これから1年におよぶW杯最終予選は、日本サッカーにとって大きな試練となるかもしれない。
文:小宮 良之
【著者プロフィール】
小宮 良之(こみや・よしゆき)/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『おれは最後に笑う』(東邦出版)など多数の書籍を出版しており、2016年2月にはヘスス・スアレス氏との共著『「戦術」への挑戦状 フットボールなで斬り論』(東邦出版)を上梓した。