定期的に現われる”悪い時の香川”。相性が良いのは本田よりも…

カテゴリ:日本代表

清水英斗

2016年09月07日

今のハリルジャパンは、理想から程遠い。

香川と原口(写真)の相性は良好。香川がスペースを空け、原口がカットインする一連の流れができていた。(C)SOCCER DIGEST

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 一方、戦術的には、左サイドに張った原口と、トップ下の香川は相性が良かった。
 
 ドルトムントは両ウイングにドリブラーを置き、ピッチの幅を使うことが攻撃の基本だ。相手の守備を横に広げ、香川はトップ下のスペースに留まり、相手の間でボールを受ける。
 
 タイの場合、2ボランチが香川の動きに引き寄せられ、マークの受け渡しをせず、ディフェンスラインに吸収される傾向があった。香川はそれを利用して前へ行き、中盤を空け、原口がカットインするスペースを作った。好パフォーマンスを見せた原口だが、それを引き出す連係も効いた。
 
 香川がボールの中継点となり、サイドのウイングを生かす。原口もドリブルだけでなく、アグレッシブに裏へ飛び出す。香川にミスが多かったが、タイ戦はドルトムントでやっているプレーが表れる試合だった。
 
 一方、UAE戦の両ウイングは、清武弘嗣と本田圭佑。時間が経つにつれて、ふたりとも中へ入ってくるようになり、トップ下周辺は、渋滞を引き起こした。
 
 逆にこのような戦況では、ドルトムントとは事情の異なるプレー、つまり香川はトップ下に留まらず、もっと流動的にポジションを取ってもいい。
 
 たとえば、今年3月に行なわれた2次予選のシリア戦。香川は5-0で勝利したチームの全得点に絡み、2ゴール・1アシストを記録した。本田と入れ替わってサイドに出たり、岡崎慎司が空けた中央のスペースに飛び出したりと、“流動性”が香川を輝かせた。
 
 しかし、UAE戦はそれが乏しかった。柔らかく滑りやすいタイのピッチで流動性を出すのはリスクが大きいが、ホームではもっとやれたはず。アウェーはシンプルに、ホームでは大胆に。
 
 香川に限ったことではないが、チームの意識と、個人の判断がちぐはぐになるところを、この最終予選は強く感じる。ショートコーナーや、ファーサイドへのクロスなど、最初から決まっていたパターンをひと通り終えると、攻撃が迷子になる。時計の針が進むほど、クオリティが下がる。右肩下がりの試合だ。
 
 最終予選は結果がすべて。
 
「結果がすべて」という言葉は、実に厄介だ。いつもは「あり」なプレーでも、最終予選ではリスクを避けたいから「なし」になる。こうした揺れが、チームと個人の一瞬の判断を狂わせる。
 
 しかし、それこそがサッカーセンスだ。
 
 チームの意志を感じ取り、時には味方と話し合い、対戦相手、環境に合ったプレーで、11人がひとつの生き物のように動く。非常に難しいことだが、それこそが究極のサッカーだ。
 
 その理想から言えば、今のハリルジャパンは程遠い。
 
 今回の2試合では、最終予選のリアルを感じ取った。その中で、個人がどのようにプレーするのかも分かった。10月のイラク戦、オーストラリア戦では、違うものを見せてほしい。
 
 それにしても……正直な話、国歌斉唱中にスコールが降り始めるとは。「このタイミングかよ!」と、内心ドキッとした。しかし、これが最終予選。本当に、何が起こるのかわからない。

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