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「ボランチできるか?」指揮官に問われた欧州日本人DFは“人生初挑戦”も即答で「できます!」。あらためて垣間見せたフットボールIQの高さ【現地発】

カテゴリ:海外日本人

中田徹

2025年04月25日

決勝直後、その目には涙が滲んでいるようだった

KNVBカップ決勝は悔しいPK戦での敗北。毎熊の脳裏によぎったのセレッソ時代の苦い記憶…。(C)Getty Images

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 ゴー・アヘッド・イーグルスの左サイドはウイングのマティス・スライが中に絞って4バックのAZに対して4対4の形を作ったり、中盤を厚くしたりするなか、左SBのアスケ・アデルガールドが大外のスペースに駆け上がってきた。

 右SBを務める毎熊にとってはスライに付くか、アデルガールドに付くか、難しい判断が絶え間なく生じる展開だったが、スペースマーキングもマンマーキングもしっかりこなしたうえ、さらにゴー・アヘッドのMFエンリク・ヤンサナがデリバリーするビルドアップのパスも読み良く、幾度かインターセプトした。20分、FWトロイ・パロットのシュートがゴールポストに当たったシーンや、FWアーネスト・ポクが積極的にシュートを放った場面は共に毎熊のインターセプトがAZの攻撃の始点となっていた。

 こうした守備のタスクをしっかり果たしながら、AZがボール保持した時の毎熊は中盤、サイドアタッカーの役割もこなす。試合を通じて毎熊の中盤での貢献度は高く、パスワークが非常に安定していた。サイドアタッカー役としての毎熊は味方を使ったワンツーでの突破が利いており、47分にポクが倒されPKを奪ったひとつ前のシーンでは、毎熊がMFペール・コープマイナースとのワンツーから右サイドを攻略し、そこから正確かつ強く低いクロスをゴール正面のパロットに通していた。

「(膝を痛めて1か月間戦線離脱してから)ヘラクレス戦で25分間だけプレーしただけだったので決勝戦のコンディションは万全ではなく、90分を迎える前に足を攣りました。決勝戦では、あの時の僕が出せるすべてを出せたと思います」

 以前にも毎熊のことを「ピッチの至るところに顔を出すユリエン・ティンバー(現アーセナル)のアヤックス時代に、プレーが被る」「360度の視野を持つ毎熊は、相手CBを背負ってポストプレーもこなせる稀有な右SB」と彼の多機能ぶりを評したことがあるが、マルテンス監督も毎熊ならFWもMFもできるという確信を持っているのだろう。

――SBの選手が360度の視野でプレーできるのは大きいですね?

「そうですね。自分はもともとFWをやってましたので。日本でもそうですけれど、オランダにはより中でプレーできるサイドバックがいないと感じます。ここでは自分の違った良さを出せるんじゃないと思います」
 
 KNVBカップ決勝という大舞台。1-0でリードして迎えた後半アディショナルタイム7分、コープマイナースが相手選手にユニホームを掴まれてバランスを崩したところ、ゴー・アヘッド・イーグルスの蹴り込んだクロスが手に当たってしまいハンド。毎熊もレフェリーに「相手の反則じゃないか」と詰め寄ったが判定は覆らず、ゴー・アヘッド・イーグルスが起死回生のPKを決めた。結局、AZはPK戦の末に敗れ去る。もう少しというところで取り損ねたタイトルに、決勝直後の毎熊の目には涙が滲んでいるようだった。

「僕がセレッソ大阪1年目の2022年、ルヴァンカップ決勝戦(対サンフレッチェ広島。1-2の敗戦)、セレッソが1-0でリードしていて、後半ロスタイムに同じような形でVARでハンドを取られて追いつかれて、そのままロスタイムで勝ち越されて負けたことがありました。今回はそれにちょっと似たものがありました。セレッソでのことがあったので、今回は勝ちたいという気持ちが強かった。それだけに心に堪えるものが大きかったです。

 正直、次の日までは堪えました。なにも考えない時に決勝のことが出てきてしまうんです。昨日の夜も寝る前に考えちゃいました。しかし、やっぱりプロである以上目の前の試合は100%でやらないといけない。すぐに試合があったので切り替えて、この試合に勝つために2日間過ごしました」
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