サンチェスはサントメ・プリンシペ人の父親、カーボ・ヴェルデ人の母親の下、ポルトガルの首都ベンフィカで生まれ育ち、９歳で名門ベンフィカの下部組織に入団した。
 
　当時から破格のポテンシャルを発揮し、飛び級でユースカテゴリーを駆け上がると、昨夏からはトップチームの練習に参加。昨年10月には正式昇格を果たした。
 
　すると、すぐさま定位置を確保し、国内リーグのみならずチャンピオンズ・リーグでも堂々たるパフォーマンスを披露。準々決勝のバイエルン戦では、世界屈指のセントラルMFであるアルトゥーロ・ビダルと互角の戦いを演じて見せた。
 
　今年３月にはA代表デビューも果たし、髪型を含めた風貌とプレースタイルから元オランダ代表の名手エドガー・ダービッツにも譬えられるなど、一気に名を上げる。
 
　この活躍をビッグクラブが見逃すはずがなく、プロデビューから半年も経たないうちにバルセロナ、マンチェスター・ユナイテッド、パリ・サンジェルマン、ユベントス、アーセナル、リバプール、ミランなどが争奪戦を繰り広げるようになる。
 
　しかし、５月10日に突然、水面下で一気に獲得交渉をまとめたバイエルンへの入団が発表された。
 
　18歳としては破格の3500万ユーロ（約40億円）という移籍金、さらにFIFAバロンドールやFIFAベストイレブンに輝いた際は別途ボーナスが加算されるという異例のオプション内容も含めて、欧州中で大きな話題となった。
 
　わずか４キャップの状態でEURO2016の登録メンバーにも当然のように選出され、今回のポーランド戦ではマン・オブ・ザ・マッチに相応しい活躍を披露した18歳の超新星。７月６日の準決勝（ウェールズ対ベルギー戦の勝者と対戦）でも、熱視線を浴びるに違いない。
 
現地取材・文：白鳥大知（サッカーダイジェスト特派）