そのあとの６人目の梅崎、７人目の李、そして８人目の駒井は、自らが名乗りを挙げて務めた。
 
【FCソウル ３(７PK６)３浦和】120分＋ＰＫ、衝撃のシーソーゲーム！ 30枚の厳選写真で振り返る

　両チーム合わせて15人目のキッカー。誰にも想像などできない極度の重圧が、チームで二番目に小さな168㌢の全身に否応なく襲いかかっていた――。
 
「こうした舞台で力をさらに発揮するには、もっと自信をつけないといけない。すべてのレベルを上げる必要を感じています。守備にもっと顔を出せて、得点にかかわれる選手にならないと」
 
　ソウルで砕け散った自分自身と、必死に向き合おうとしていた。もがき苦しむ日々が、しばらく続くはずだと言う。とはいえ、そこから果たして脱せるかも、まだ分からない。
 
　ただし、この心の奥底までえぐった途轍もなく深い傷は、刻まれたままで構わないとさえ思っている。それが浦和の駒井としての責任だと受け止める。
　
「みんなからいろんな言葉をかけてもらいました。でも、最悪の経験として、この日を僕は忘れないし、必ず常に向き合っていくことになる。サッカーをするなかで、どうにかしてこの経験を力に変えていかなければいけない」
 
　試合後、ゴール裏の一角を赤く埋めた浦和サポーターに挨拶した際、熱く燃えるようなエールを受けた。頭を深々と下げた駒井は、しばらくそのまま再び動けなくなった。浦和を支えるすべての人に対する申し訳ない気持ちで、胸が張り裂けそうになった。

　そんな彼の肩を再び阿部が支え、手を差し伸べるチームメイトから「ひとりのせいなんかじゃない」と声を掛けられた。

　白で統一されたユニホームは激戦を物語るように、汗と土にまみれていた。彼が全力を振り絞ったことは誰もが認めている。その勇猛果敢に挑みかかるドリブル突破は、浦和の新たな武器になり出している。

「失望や絶望を通り越して、涙も出ませんでした……」

　駒井が顔を上げて、激戦の傷跡の残るピッチに一歩踏み出した。

　シーズンは続く。そして駒井の浦和での本当の戦いは、ここから始まる。

 
取材・文：塚越 始（サッカーダイジェスト編集部）