【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の七十一「勝利への近道、それは局面を制すること」

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2016年05月19日

攻め切ることで、相手の守備だけでなく、攻撃も弱らせられる。

優れた能力も適材適所でなければ、無意味に帰する。 写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 ところが後半は打って変わり、甲府のペースとなる。クリスチアーノがポジションを入れ替えたことで、右に起点を作れるようになったからだ。このブラジル人FWは、左から攻めるのは分が悪い、と悟ったのだろう。
 
 彼が、弱さが見られたマリノスの左サイドを抉り始めると、退かざるを得ないマリノスを押し包む格好になった。ボール支配率も完全に逆転。そして67分には、敵のミスをいくつも誘い、津田琢磨が同点弾を放り込んだ。
 
 マリノスは、攻撃のキーマンである齋藤が左サイドに戻り、後方で守備に奔走。ここが破綻しかけたことで劣勢に立ったわけだが、同時に守勢に回ったことにより、攻撃力も著しく減退した。
 
 エリク・モンバエルツ監督は左サイドの苦境を目の当たりにし、齋藤を右に動かせなかったのかもしれない。しかし、もし齋藤の攻撃力を右で発動させていたら、試合を盛り返せただろう。最も得点に絡む力のある齋藤が自陣にいては、宝の持ち腐れだった。
 
 率直に言って、マリノスは戦術的に敗北した。一方、甲府はクリスチアーノという戦術を十全に使いこなした。右サイドを戦術軸にして攻守を旋回させ、マリノスを飲み込んだのだ。
 
 ひとつのサイドを攻め切ることは、相手の守備だけでなく、攻撃力も低下させる、ということの証左だった。
 
 攻防は常に一体なり、ということか。
 
文:小宮 良之(スポーツライター)
 
【著者プロフィール】
小宮良之(こみや・よしゆき)/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『おれは最後に笑う』(東邦出版)など多数の書籍を出版しており、2016年2月にはヘスス・スアレス氏との共著『「戦術」への挑戦状 フットボールなで斬り論』(東邦出版)を上梓した。
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