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【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の六十九「“戦術”と“戦略”の関係を正しく理解できているか!?」

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2016年05月05日

戦術と戦略を使いこなして長期政権を築いた名将ファーガソン。

マンUを率いた27年間でサッカー界はピッチ内外で劇的な変貌を遂げたが、それに対応し続けたファーガソン。この驚異の能力を継承する者は、もう出現しないのか。 (C) Getty Images

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 しかし今シーズン、モウリーニョはチェルシーで完全に失敗し、解任の憂き目に遭っている。
 
「モウリーニョは、同じチームを3年以上率いることはできない。選手が戦術に飽き飽きするからさ」
 
 それは、しばしば語られる定説である。勝利するための手段そのものの戦術に、選手が満腹感を覚えてしまうのだ。
 
 では、なぜアレックス・ファーガソンは、マンチェスター・Uで27年間もの長期政権を保つことができたのか?
 
 それは、このスコットランド人指揮官が戦術に固執しなかったからだろう。
 
 戦術と対を成すのが、幕末の兵術書に“ストラトギー”と書かれた「戦略」である。それは、戦術そのものを旋回させる全体のデザインであり、政略とも言える。総合的、複合的な視野で、全体の方向性を指図することだ。
 
 つまりファーガソンは、戦術を動かす戦略家だった。クラブ全体を動かす力を少しずつ強め、育成部門の人事さえも最終的には握っていた。
 
 クラブ全体を動かす政治マネジメントは、ゼネラルマネージャーの仕事に近い。これは拙著『サッカー名将・名選手に学ぶ48の法則』(中公新書ラクレ)でも書いていることだが、ファーガソンのように戦術と戦略の両方の才覚を持ち合わせるリーダーは稀少である。
 
 Jリーグ、あるいは日本サッカーにおいては、戦術と戦略がごちゃ混ぜにされてしまうことが多い。
 
 しかし、ふたつの要素は切り離して考えるべきだ。ファーガソンの成功事例は珍しく、世界のトップクラブでは、この役割を現場とフロントで分担し、協調しながら事を為している。
 
 戦術を回すために戦略はあり、戦略で勝つために戦術が欠かせないのだ。
 
文:小宮 良之(スポーツライター)
 
【著者プロフィール】
小宮良之(こみや・よしゆき)/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『おれは最後に笑う』(東邦出版)など多数の書籍を出版しており、2016年2月にはヘスス・スアレス氏との共著『「戦術」への挑戦状 フットボールなで斬り論』(東邦出版)を上梓した。
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