ミラン番記者の現地発・本田圭佑「混乱の極みにあるミランで唯一褒められる本田」

カテゴリ:連載・コラム

マルコ・パソット

2016年04月28日

恥ずべきヴェローナ戦の後、監督が唯一褒めたのが本田だった。

飛び抜けた力も、自信もない、平凡な選手で構成された現在のミラン。クラブの誤った運営も相まって、まさに最悪の時期を迎えている。本文中にある中国系コングロマリットへの売却が具体的に進んでいるとのニュースが先日流れたが、もはやベルルスコーニ体制での立て直しが不可能だろうか。 (C) Getty Images

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 思い出してほしい。月曜日、ミランは最下位のチームに、28度もシュートを許したのだ。どうにか大差で負けずに済んだのは、ひとえにジャンルイジ・ドンナルンマの好セーブのおかげだ。この17歳の守護神がいなかったら、どんなスコアで負けていたか……考えるだけで恐ろしい。
 
 とにかく、恥ずべきことである。
 
 ブロッキは決して悪い監督ではない。将来有望な若手監督である。そんな彼は今、能力のキャパシティ以上の仕事を押し付けられてしまっている。有望な指揮官が、まだ何も始まらないうちに、こういうかたちで潰されてしまうのは非常に残念である。
 
 そして、第三の混乱はチームだ。今のミランはごく平凡なチームであり、2、3人を除けば、中レベル程度の選手で構成されている。
 
 その2、3人の優秀な選手は、自分のことしか考えていない。彼らは、監督に尻をひっぱたかれて、初めて歯を食いしばってプレーすることができる有り様だ――尻をひっぱたけたのがミハイロビッチだ。
 
 突出した選手はおらず、皆、平均的な枠にこじんまりと収まり、それ以上の力を出そうとはしない。これでは、トップレベルに返り咲くなど到底無理な話である。
 
 そんななかで、ブロッキの言葉によると、本田圭佑は何とか“突き抜けよう”としている選手のひとりだそうだ。ヴェローナ戦の後、ブロッキが唯一褒めたのが本田だった。
 
「ケイスケは、聡明さを持って戦った数少ない選手のひとりだ。彼は、闘志と実力を見せてくれた。しかし残念ながら、誰もそれについてきてはくれなかった」
 
 その本田だが、実はヴェローナ戦でも使われない可能性があった。彼がスタメンに入れたのは、ジャコモ・ボナベントゥーラが怪我をしたからだ。そうでなければ、3試合連続でベンチだったろう。
 
 本田のプライオリティーは、ボナベントゥーラ、ボアテングに次いで3番目。そのため、カルピ戦でブロッキは、ボアテングをスタメンに入れた。我々メディアは、まさか彼がキックオフからプレーするとは思っていなかったので大いに驚いたものだが、新監督は彼に賭けたようだ。
 
 しかし、結果は無残だった。ボアテングはまだスタメンでプレーするだけの準備ができていなかった。数年前にミランにいた時に見せていた瞬発力は、今の彼にはもうない。ボアテング起用は、大失敗だったのである。
 
 こうして、ヴェローナ戦では本田がトレクアルティスタの位置に入った。彼が最も好むというポジションだ。ここでプレーするのは昨年9月22日のウディネーゼ戦以来というから、かなり昔のことのように感じる。
 
 さて、その結果は? 目の覚めるような活躍はなかったが、悪くもなかったというのが正直な感想だ。彼はよく戦ったし、ミドルシュートからジェレミー・メネーズのゴールをお膳立てした。しかし一方で、95分にハンドでヴェローナに勝ち越しのチャンスを与えてしまった……。
 
 それでも、そのコメントからも分かるように、ブロッキは本田の働きには満足したようだ。次節のフロジノーネ戦、その次のボローニャ戦で、ボナベントゥーラが復帰した時、ブロッキはどちらを選ぶのだろうか。
 
 いずれにせよ、問題は残り試合がわずかしかないことだ。現状では、ミランが苦い思いを持って最終節を迎えないようにするのは、かなり難しい。
 
文:マルコ・パソット(ガゼッタ・デッロ・スポルト紙)
翻訳:利根川晶子
 
【著者プロフィール】
Marco PASOTTO(マルコ・パソット)/1972年2月20日、トリノ生まれ。95年から『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙で執筆活動を始める。2002年から8年間ウディネーゼを追い、10年より番記者としてミランに密着。ミランとともにある人生を送っている。
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