ル・グラエット会長の時間稼ぎのは完全に徒労に終わった。
しかし、最近になってベンゼマには、パリを舞台とする麻薬密売の組織的マネーロンダリングに関わった疑惑が浮上する。参考人として司法当局の取り調べを受けた本人の弁明も、あまりに軽薄という有様。“毛糸玉”はもはや“重石”になってしまったのだ。
この間の世論調査を比較すると、恐喝容疑発覚後の昨年末の時点では、82%のフランス人がベンゼマの代表復帰に反対。ところが4か月を経た今年3月末時点でも、73%が反対と答えた。ル・グラエット会長の時間稼ぎは完全に徒労に終わったのだ。
もっとも、FFFとデシャン監督が世論に屈したかと言えば、そう断言できない部分もある。ベンゼマ抜きで戦ったここ最近のフランス代表は、ドイツ戦(○2-0)、イングランド戦(●0-2)、オランダ戦(○3-2)、ロシア戦(○4-2)という4試合で計9ゴールを挙げているのだ。
攻撃陣はアントワーヌ・グリエーズマン(アトレティコ・マドリー)やアントニー・マルシアル(マンチェスター・ユナイテッド)、キングスレー・コマン(バイエルン)ら若手が台頭し、ディミトリ・パイエ(ウェストハム)やアンドレ=ピエール・ジニャクなど中堅・ベテランの好調ぶりも光っている。
対してベンゼマは、直近の代表戦14試合でわずか3ゴール。マドリーで披露するようなハイパフォーマンスを、レ・ブルーでは見せられていなかったのだ。
また、とくに3月のAマッチウイークでは、ベンゼマ抜きの“グループ心理”が非常に良好だったことも確認されている。個性派が揃うプロスポーツのチームをまとめるうえで、グループ心理の安定は欠かせない。
つい先日も、フランスではこんなことがあった。パリ・サンジェルマンのロラン・ブラン監督が、自身やチームメイトを愚弄したため出場停止処分を科していたセルジュ・オーリエに情けをかけて、チャンピオンズ・リーグ準々決勝に起用。結果、グループが空中分解し、マンチェスター・シティに敗れた大きな原因のひとつとなってしまったのだ。
こうしたなか、EURO開幕まで2か月と迫ったのを機にル・グラエット会長は、自身の専断を解いてデシャン監督にベンゼマ問題の最終決定を一任。そして指揮官は、こんがらがった重い毛糸玉そのものを綺麗さっぱりに捨てる大決断に至ったのである。
「自分の足に銃弾を撃ち込むか、それともトゲが刺さったままの足を痛みに堪えながら引きずるか。デシャンはそうした自問をしたに違いない」
レキップ紙で代表番主筆を務めるヴァンサン・デュリュック記者がそう書いた通り、デシャンにとっては文字通り苦渋の選択だったはずだ。
しかし、ベンゼマをEUROに出場させれば、メディアも国民もこの件で大騒ぎするのは確実で、グループが落ち着きを得るのは困難だ。それならば、戦力が多少低下しても騒動を収束させ、好調を維持するその他のアタッカーに賭けよう――。デシャン監督はそんな覚悟を決めたのだ。
この間の世論調査を比較すると、恐喝容疑発覚後の昨年末の時点では、82%のフランス人がベンゼマの代表復帰に反対。ところが4か月を経た今年3月末時点でも、73%が反対と答えた。ル・グラエット会長の時間稼ぎは完全に徒労に終わったのだ。
もっとも、FFFとデシャン監督が世論に屈したかと言えば、そう断言できない部分もある。ベンゼマ抜きで戦ったここ最近のフランス代表は、ドイツ戦(○2-0)、イングランド戦(●0-2)、オランダ戦(○3-2)、ロシア戦(○4-2)という4試合で計9ゴールを挙げているのだ。
攻撃陣はアントワーヌ・グリエーズマン(アトレティコ・マドリー)やアントニー・マルシアル(マンチェスター・ユナイテッド)、キングスレー・コマン(バイエルン)ら若手が台頭し、ディミトリ・パイエ(ウェストハム)やアンドレ=ピエール・ジニャクなど中堅・ベテランの好調ぶりも光っている。
対してベンゼマは、直近の代表戦14試合でわずか3ゴール。マドリーで披露するようなハイパフォーマンスを、レ・ブルーでは見せられていなかったのだ。
また、とくに3月のAマッチウイークでは、ベンゼマ抜きの“グループ心理”が非常に良好だったことも確認されている。個性派が揃うプロスポーツのチームをまとめるうえで、グループ心理の安定は欠かせない。
つい先日も、フランスではこんなことがあった。パリ・サンジェルマンのロラン・ブラン監督が、自身やチームメイトを愚弄したため出場停止処分を科していたセルジュ・オーリエに情けをかけて、チャンピオンズ・リーグ準々決勝に起用。結果、グループが空中分解し、マンチェスター・シティに敗れた大きな原因のひとつとなってしまったのだ。
こうしたなか、EURO開幕まで2か月と迫ったのを機にル・グラエット会長は、自身の専断を解いてデシャン監督にベンゼマ問題の最終決定を一任。そして指揮官は、こんがらがった重い毛糸玉そのものを綺麗さっぱりに捨てる大決断に至ったのである。
「自分の足に銃弾を撃ち込むか、それともトゲが刺さったままの足を痛みに堪えながら引きずるか。デシャンはそうした自問をしたに違いない」
レキップ紙で代表番主筆を務めるヴァンサン・デュリュック記者がそう書いた通り、デシャンにとっては文字通り苦渋の選択だったはずだ。
しかし、ベンゼマをEUROに出場させれば、メディアも国民もこの件で大騒ぎするのは確実で、グループが落ち着きを得るのは困難だ。それならば、戦力が多少低下しても騒動を収束させ、好調を維持するその他のアタッカーに賭けよう――。デシャン監督はそんな覚悟を決めたのだ。