“レジリエンス力”を企業研修に活用
企業の課題解決型の別のスポーツ活用事例として、井川たちは「お仕事紹介フェア」の開催に向けて動きだしている。ベルマーレは昨秋、およそ170社のパートナー企業を対象とするアンケート調査を実施した。浮かび上がってきたのが、人材の確保に困っているという、多くの企業に共通する悩み事だった。
「ベルマーレのクラブパートナーは、その大多数が中小企業です。企業名は知られていても、具体的にどのような事業を行い、社会貢献している会社なのか、そこまではあまり知られていないのが実情でしょう。
その一方でホームタウンの湘南エリアには、地域の企業で働く人材を増やし、定着させていきたいという課題があります。ベルマーレがお仕事紹介フェアを主催して、地域や社会に貢献している会社が多数ホームタウンの9市11町に存在していると知ってもらえるだけで、開催する意義があると思います」(井川)
実際のイベントは、まずは新卒採用の学生向け、次回は中途採用の社会人向けというように対象を分け、参加希望者をベルマーレのサポーターから募集する。当日はスタンプラリー形式で出展各社を回ってもらい、コンプリートした参加者は選手のサイン入りグッズであったり、J1の観戦チケットであったり、特典のプレゼントをもらえるようにする。
天候に恵まれれば、ベルマーレのホームスタジアムに隣接する総合公園の広場を会場として、当日たとえば親子連れの小中学生が関心を持ってくれたら、飛び入り参加もできるようにする。井川はこのような構想を練り、ベルマーレのスタッフたちとコミュニケーションを取りながら、企画の実施案について検討を進めている。
かつてクラブ消滅の危機にも瀕したベルマーレのパートナー企業には、「クラブが存続さえしてくれればいい」と、ビジネス面のリターンなどは度外視して支援してくれている企業も少なくない。
その一方で昨秋のアンケート調査の結果、ベルマーレへの協賛を自社の収益拡大に繋げられたらと望んでいる企業も同じくらい存在していると井川たちは把握できた。ベルマーレが目標としている「ターゲット35」の実現へ、課題解決型のニーズに応える、きめ細やかな提案をどのように続けていくか。有機土壌の育成やお仕事紹介フェアはその手始めなのだ。
「J3までを対象とすると、いまは年間予算がベルマーレと同規模か、下回っているクラブがほとんどでしょう。課題解決型の収益を増やしていけたら、ベルマーレ以外のJクラブも予算規模を大きくしていける可能性が膨らみます。支援してくださる企業とクラブの共創で、ステークホルダーの持続可能性をいかに高めていけるか。
その観点で課題をヒアリングし、具体的な解決策に繋がるアイデアを提示する。そこにコンサルタントとしての私たち自身の存在価値があるということです。共創プロジェクトの収支も黒字にしていかなければ持続可能にはなりませんから、やはりいかにスポーツクラブが稼ぎつづけられる手段を増やしていけるかが重要です」(井川)
設立32年目を迎えたJリーグは、合わせて60のクラブが全国各地に散らばっている。それぞれのクラブが独自のカラーを打ち出し、地域性の違いを踏まえて課題解決のアイデアを具現化していけば、Jリーグを中心とするマーケットの大幅な拡大も見えてくる。井川たちはベルマーレならではの独自色の強い企画も用意する。
「協賛企業の新入社員が対象となる“レジリエンス研修”です。J2降格の危機をベルマーレが何度も乗り越えてきた大きな秘訣は、もしかすると強靭で折れないメンタリティに支えられているからではないか。つまり、Jリーグ屈指のレジリエンス力のあるクラブだからこそ伝えられるメッセージがあるのではないかと、チームメンバーと議論を重ね出てきたアイデアです」
「ベルマーレのクラブパートナーは、その大多数が中小企業です。企業名は知られていても、具体的にどのような事業を行い、社会貢献している会社なのか、そこまではあまり知られていないのが実情でしょう。
その一方でホームタウンの湘南エリアには、地域の企業で働く人材を増やし、定着させていきたいという課題があります。ベルマーレがお仕事紹介フェアを主催して、地域や社会に貢献している会社が多数ホームタウンの9市11町に存在していると知ってもらえるだけで、開催する意義があると思います」(井川)
実際のイベントは、まずは新卒採用の学生向け、次回は中途採用の社会人向けというように対象を分け、参加希望者をベルマーレのサポーターから募集する。当日はスタンプラリー形式で出展各社を回ってもらい、コンプリートした参加者は選手のサイン入りグッズであったり、J1の観戦チケットであったり、特典のプレゼントをもらえるようにする。
天候に恵まれれば、ベルマーレのホームスタジアムに隣接する総合公園の広場を会場として、当日たとえば親子連れの小中学生が関心を持ってくれたら、飛び入り参加もできるようにする。井川はこのような構想を練り、ベルマーレのスタッフたちとコミュニケーションを取りながら、企画の実施案について検討を進めている。
かつてクラブ消滅の危機にも瀕したベルマーレのパートナー企業には、「クラブが存続さえしてくれればいい」と、ビジネス面のリターンなどは度外視して支援してくれている企業も少なくない。
その一方で昨秋のアンケート調査の結果、ベルマーレへの協賛を自社の収益拡大に繋げられたらと望んでいる企業も同じくらい存在していると井川たちは把握できた。ベルマーレが目標としている「ターゲット35」の実現へ、課題解決型のニーズに応える、きめ細やかな提案をどのように続けていくか。有機土壌の育成やお仕事紹介フェアはその手始めなのだ。
「J3までを対象とすると、いまは年間予算がベルマーレと同規模か、下回っているクラブがほとんどでしょう。課題解決型の収益を増やしていけたら、ベルマーレ以外のJクラブも予算規模を大きくしていける可能性が膨らみます。支援してくださる企業とクラブの共創で、ステークホルダーの持続可能性をいかに高めていけるか。
その観点で課題をヒアリングし、具体的な解決策に繋がるアイデアを提示する。そこにコンサルタントとしての私たち自身の存在価値があるということです。共創プロジェクトの収支も黒字にしていかなければ持続可能にはなりませんから、やはりいかにスポーツクラブが稼ぎつづけられる手段を増やしていけるかが重要です」(井川)
設立32年目を迎えたJリーグは、合わせて60のクラブが全国各地に散らばっている。それぞれのクラブが独自のカラーを打ち出し、地域性の違いを踏まえて課題解決のアイデアを具現化していけば、Jリーグを中心とするマーケットの大幅な拡大も見えてくる。井川たちはベルマーレならではの独自色の強い企画も用意する。
「協賛企業の新入社員が対象となる“レジリエンス研修”です。J2降格の危機をベルマーレが何度も乗り越えてきた大きな秘訣は、もしかすると強靭で折れないメンタリティに支えられているからではないか。つまり、Jリーグ屈指のレジリエンス力のあるクラブだからこそ伝えられるメッセージがあるのではないかと、チームメンバーと議論を重ね出てきたアイデアです」
実際に昨シーズンもベルマーレは降格の危機に瀕している。下から2番目の17位で迎えた33節の直接対決で、最下位の横浜FCに仮に敗れていたら、自力でのJ1残留の可能性は消えていた。
「それだけ大きな重圧に晒されているはずなのに、ベルマーレのスタッフは誰ひとりとして下を向かず、表向きは平然と自分たちができる仕事に愚直に邁進しているわけです。実際に彼らと接していて、感心するしかありませんでした」
井川は1999年から2023年2月までの25年近く、川崎フロンターレのスタッフだった。
「J1で初優勝してから、フロンターレの選手たちは大事な試合でガチガチにならなくなりました。重圧のかかる場面を乗り越えて、結果を残した経験が、平常心を保てる強靭なメンタリティへと繋がったのだと思います」
計画しているレジリエンス研修も、強靭で折れないメンタリティのはぐくみ方が主なテーマとなる。
「営業に携わっているベルマーレのスタッフには、トップチームの成績が振るわないなかでも、どのような心持ちで、どうやって協賛を獲得してきたか、できれば実際の体験談を交えて話してもらいたいと考えています。さらに昨シーズン、降格の危機に瀕するなかで、クラブスタッフ全員が一体感を持ち、前を向いて戦い抜けたのはなぜなのか、というようなお話もしていただけないか相談しています。新入社員を対象とするのは、まだ社会人1年目ですから、いっぱい躓(つまず)くだろうとわかっているからです。
失敗して凹(へこ)んでもいいけど、凹んだままでは終わらないように、レジリエンスな精神をはぐくんできたクラブからいろいろ学んでもらいます。研修を通してベルマーレを応援してくれる協賛企業の社員が増えれば、クラブにとってもプラスですから、一石二鳥以上の価値を持つ研修となるはずです」
【PHOTO】ゲームを華やかに彩るJクラブ“チアリーダー”を一挙紹介!
「それだけ大きな重圧に晒されているはずなのに、ベルマーレのスタッフは誰ひとりとして下を向かず、表向きは平然と自分たちができる仕事に愚直に邁進しているわけです。実際に彼らと接していて、感心するしかありませんでした」
井川は1999年から2023年2月までの25年近く、川崎フロンターレのスタッフだった。
「J1で初優勝してから、フロンターレの選手たちは大事な試合でガチガチにならなくなりました。重圧のかかる場面を乗り越えて、結果を残した経験が、平常心を保てる強靭なメンタリティへと繋がったのだと思います」
計画しているレジリエンス研修も、強靭で折れないメンタリティのはぐくみ方が主なテーマとなる。
「営業に携わっているベルマーレのスタッフには、トップチームの成績が振るわないなかでも、どのような心持ちで、どうやって協賛を獲得してきたか、できれば実際の体験談を交えて話してもらいたいと考えています。さらに昨シーズン、降格の危機に瀕するなかで、クラブスタッフ全員が一体感を持ち、前を向いて戦い抜けたのはなぜなのか、というようなお話もしていただけないか相談しています。新入社員を対象とするのは、まだ社会人1年目ですから、いっぱい躓(つまず)くだろうとわかっているからです。
失敗して凹(へこ)んでもいいけど、凹んだままでは終わらないように、レジリエンスな精神をはぐくんできたクラブからいろいろ学んでもらいます。研修を通してベルマーレを応援してくれる協賛企業の社員が増えれば、クラブにとってもプラスですから、一石二鳥以上の価値を持つ研修となるはずです」
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