昨季から松井の役割は、スタメンから“ジョーカー”へと変わった。スタメンで出たい気持ちは内に秘めつつも、ベンチで戦況を見つめるなかで、自分が出た時にどうチャンスを作り出すかを常に考えるようになったことで、戦術眼にさらに磨きがかかった印象を受ける。さらに大宮戦では、球際でのファイトやボールホルダーへの精力的なフォアプレス・プレスバックといった泥臭さも、チームの士気を高める貴重なファクターとなった。
 
　常日頃、結果にこだわる松井は試合後、「もう少しボールを持てたし、リズムを作れたと思う。ラストパスの精度もまだまだ。最後は（試合を）決めたかった」と勝利に導けなかった無念さを滲ませた。しかし、一方でJ１復帰から５試合を消化してチームの成長も感じている。
 
「負けないことが一番大事。最初はずっと守っているだけだったけど、だんだん攻める回数も増えて、（パスを）つなげるようになってきている。コンビネーションを高めて攻撃のバリエーションを増やしつつ、勝負強さを突き詰められるか。あとはリスクマネジメントというか、ゲームを読む力の部分も磨いていく必要があると思う」
 
　名波監督の掲げるアクションサッカーは、J１の舞台でも少しずつ形になり始めている。それをもう一段上にステップアップさせ、強敵たちと渡り合うためには、間違いなく松井の力が必要になるはずだ。
 
取材・文：小田智史（サッカーダイジェスト編集部）