海外に行くのは早ければ早いほど良い」というのは幻想である。
「メッシは超人とか、宇宙人とか言われる。でも、あいつはいつだって、アルゼンチン人なんだよ」
そう語っていたのは、バルサの強化担当者だった。
アルゼンチン人のサッカー選手は戦闘意識が高く、物事に挑む時、決して怯まない。戦いが終わるまで、不屈の闘志で戦い続けられる。それは血のようなものである。
スペインで何があったとしても、メッシはそのアルゼンチンの血を沸騰させさえすれば良かった。彼は幼くして、アルゼンチン人として覚醒していたのだ。
一方、日本人選手はどうしても、その国に適応しよう、馴染もうとする。そこに無理が生じ、精神的にも肉体的にも消耗する。そして未成年の場合、挫けた時に立ち戻るメンタリティーができていない。そのまま、立ち上がれないのだ。
それゆえに、十代で海を越え、活躍を遂げた選手はほとんどいない。一時的に成果を上げた選手を除けば、日本人で十代にして海を渡り、華々しい成功を遂げたのは“キング・カズ”こと三浦知良ただひとりではないだろうか。
カズは高校1年生でブラジルに渡り、荒波に揉まれても日本人であり続け、その上でブラジルらしさも身につけ、土地の人にも愛された。日本人離れした精神力と言わざるをえない。わずか15、16歳で、成熟していたのだろう。
もっとも、49歳で現役を続けているタフネスを見ても、カズが特殊な人格者であることは明白だろう。
現実的には、日本人は18歳までは自分と向き合い、日本人として精神的に習熟してから、海を渡るべきだろう。少なくとも、「海外に行くのは早ければ早いほど良い」というのは幻想と捉えるべきである。
文:小宮 良之(スポーツライター)
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。01年にバルセロナへ渡りライターに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写。近著に『おれは最後に笑う』(東邦出版)。
そう語っていたのは、バルサの強化担当者だった。
アルゼンチン人のサッカー選手は戦闘意識が高く、物事に挑む時、決して怯まない。戦いが終わるまで、不屈の闘志で戦い続けられる。それは血のようなものである。
スペインで何があったとしても、メッシはそのアルゼンチンの血を沸騰させさえすれば良かった。彼は幼くして、アルゼンチン人として覚醒していたのだ。
一方、日本人選手はどうしても、その国に適応しよう、馴染もうとする。そこに無理が生じ、精神的にも肉体的にも消耗する。そして未成年の場合、挫けた時に立ち戻るメンタリティーができていない。そのまま、立ち上がれないのだ。
それゆえに、十代で海を越え、活躍を遂げた選手はほとんどいない。一時的に成果を上げた選手を除けば、日本人で十代にして海を渡り、華々しい成功を遂げたのは“キング・カズ”こと三浦知良ただひとりではないだろうか。
カズは高校1年生でブラジルに渡り、荒波に揉まれても日本人であり続け、その上でブラジルらしさも身につけ、土地の人にも愛された。日本人離れした精神力と言わざるをえない。わずか15、16歳で、成熟していたのだろう。
もっとも、49歳で現役を続けているタフネスを見ても、カズが特殊な人格者であることは明白だろう。
現実的には、日本人は18歳までは自分と向き合い、日本人として精神的に習熟してから、海を渡るべきだろう。少なくとも、「海外に行くのは早ければ早いほど良い」というのは幻想と捉えるべきである。
文:小宮 良之(スポーツライター)
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。01年にバルセロナへ渡りライターに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写。近著に『おれは最後に笑う』(東邦出版)。