【大宮】J2王者がJ1王者に突き付けられた現実。チャンピオンの“授業”を復習せよ

カテゴリ:Jリーグ

古田土恵介(サッカーダイジェスト)

2016年03月21日

バランスを崩した攻撃で1ゴールを得るも、次が続かず。

後半開始早々からバランスを崩して攻めた。結果として1ゴールを返すも、4つの決定機を活かしたのはそれだけだった。写真:徳原隆元

画像を見る

 39分の2失点目は自陣深くでボールロストしたシーンから始まる。沼田がP・ウタカに身体を入れられて攻から守に。ミキッチ、宮原とパスが回って、河本、沼田、横山が形成したトライアングルの中でP・ウタカが受ける。寄せるのか、スペースをカバーするのか。中途半端になった河本の裏へと浅野が抜け出し、右足を一閃。ゴールネットを揺らされた。

 実はこの悪癖は、J2降格を味わった14シーズンと同様のものだ。個々の判断スピードも改善の必要があるが、どのスペースに、誰が(この場合は1トップなのか2シャドーなのか)が入ったら、どう対応するのか。これが曖昧なままゲームを進めてしまうのだ。

 ゾーンディフェンスを採用する以上、仕方ない部分は存在する。相手はそれを狙ってグレーゾーンに侵入と離脱を繰り返すわけで、試合中の咄嗟の判断で潰すのなら、マンツーマンへの切り替えが単純明快だろう。

 今回の広島戦で、もちろん大宮は無策のまま後半に臨んだわけではなかった。「ハーフタイムに『後ろはマンツーマンでいこう』と話して修正を加えた。でも、やっぱり即席。切り替えてすぐにできるもんじゃないし、完成度は低かった」(横山)。

 勝点を獲得するには最低でも2点が必要な状況も尾を引いた。N・ペチュニクに代えて横谷、沼田に代えて奥井を投入。和田を昨季同様の左SBに回したうえで、「バランスを崩して攻撃した」(渋谷監督)ことが、ターニングポイントだった3失点目の原因となった。

 ただ、バランスを重要視する大宮が、自らそれを破った戦術は、即座に失敗して3失点につながったわけではない。広島側が「14年の『前半を3-0で折り返して、後半に3点を取られた試合』を覚えていた」(森保監督)ことと相まって、後半の立ち上がりは上手くハマっていた。

 選手同士の距離感良くボールを保持しながら、相手を陣地深くに押し込んだ。奪われれば、素早く切り替えて襲い掛かり、再びポゼッションする。波状攻撃は王者の動揺を誘うに値するクオリティで、52分にはムルジャ、55分には横谷が決定機を迎え、60分には泉澤と家長の「感覚の合う」(泉澤)ラインから横谷がゴール。64分にもペナルティエリア内から家長がシュートを放つ場面があり、一気に同点、そして逆転も描ける時間帯だった。

 しかし、タイスコアは遠かった。「あの流れで2点目を取れなかったのが実力」(横山)と見るべきだろう。裏返せば、後手に回りながらもしぶとく耐え凌ぎ、「相手ではなく、自分たちがなにをできるか」(森保監督)というメンタルコントロールでもって、半ば捨て身のようなアタックを仕掛けた大宮に、したたかにトドメを刺した広島の強さが際立ったことになる。
【関連記事】
【J1採点&寸評】大宮×広島|浅野がエースナンバーに相応しい働き。J1王者がJ2王者に差を見せつける
【J1】浅野、青山が1得点・1アシスト! 広島が大量5得点でリーグ初勝利
【大宮】“昇り続けるオレンジ”へ。正念場の10日間がやってきた
【日本代表】ストライカー不遇の法則。佐藤寿人、豊田陽平…それでも代表監督に愛されなかった理由
中村俊輔、本田圭佑、柴崎岳らが背負う"ナンバー10の使命"――ジーコ元日本代表監督が、中村を使い続けた理由とは
【3.24アフガニスタン戦のスタメン予想】本田、香川、長友、吉田はベンチスタート!? トップ下は“ハリルホジッチ推薦”の原口で、国内組が多用される可能性も

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト なでしこJに続け!
    4月10日発売
    U-23日本代表
    パリ五輪最終予選
    展望&ガイド
    熾烈なバトルを総力特集
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト 世界各国の超逸材を紹介!
    4月18日発売
    母国をさらなる高みに導く
    「新・黄金世代」大研究
    列強国も中小国も
    世界の才能を徹底網羅!!
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 高校サッカーダイジェストVo.40
    1月12日発売
    第102回全国高校選手権
    決戦速報号
    青森山田が4度目V
    全47試合を完全レポート
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ