もしベトナムが2-2でOKという意識だったら…
試合に話を戻すと、ベトナムが手を凝らしたのはセットプレーだけではなかった。今の日本はミドルプレスとサイド攻撃が長所だが、ベトナムは攻守両面でそれらを潰した。
日本のミドルプレスに対しては、自陣で人数をかけたポゼッションで剥がす。前進する意識は薄かったが、剥がし続けることで日本のプレッシングは足が止まり、ボールを奪いたくても奪えない、ストレスを抱えることになる。さらに日本が得意の1対1の局面でも、必ずしもボールを奪い切れるわけではなく、ベトナムは強さと巧さを発揮してかわしていた。
このミドルプレスに加え、日本はサイド攻撃も詰まった。最近の日本は伊東純也と菅原由勢が連係する右サイドが強みになっているが、ベトナムは右へのパスの起点である右CBの板倉滉へ寄せ、展開を制限した。板倉が追い込まれれば、菅原は板倉の脇へサポートに下りざるを得ない。
前半の終わり頃になり、伊東が右サイドでスペースを得てドリブルで仕掛ける場面があったが、前半はそれが初出ではないかというほど、日本の右サイドは封鎖された。
また、ベトナムの思い切ったラインコントロールも見事だった。コンパクトなハイラインを敷くだけでなく、日本のボールがフリーで背後が狙われそうになったら、サッとラインが下がる。この鋭いラインの上下動は、20年以上前に日本代表が代名詞とした『フラットスリー』を思い出させた。
日本のミドルプレスに対しては、自陣で人数をかけたポゼッションで剥がす。前進する意識は薄かったが、剥がし続けることで日本のプレッシングは足が止まり、ボールを奪いたくても奪えない、ストレスを抱えることになる。さらに日本が得意の1対1の局面でも、必ずしもボールを奪い切れるわけではなく、ベトナムは強さと巧さを発揮してかわしていた。
このミドルプレスに加え、日本はサイド攻撃も詰まった。最近の日本は伊東純也と菅原由勢が連係する右サイドが強みになっているが、ベトナムは右へのパスの起点である右CBの板倉滉へ寄せ、展開を制限した。板倉が追い込まれれば、菅原は板倉の脇へサポートに下りざるを得ない。
前半の終わり頃になり、伊東が右サイドでスペースを得てドリブルで仕掛ける場面があったが、前半はそれが初出ではないかというほど、日本の右サイドは封鎖された。
また、ベトナムの思い切ったラインコントロールも見事だった。コンパクトなハイラインを敷くだけでなく、日本のボールがフリーで背後が狙われそうになったら、サッとラインが下がる。この鋭いラインの上下動は、20年以上前に日本代表が代名詞とした『フラットスリー』を思い出させた。
ただし、あのハードワークを90分続けられるかと言えば、厳しい。実際に前半の30分頃からベトナムの動きは落ち始めた。さらに45分、日本が2-2とする同点ゴールを決めると、勝利を目ざすベトナムは後半を含めて一層高い位置からファーストディフェンスに向かい始め、それが彼らのコンパクトさを失わせた。
前半アディショナルタイムに3-2とした中村の逆転ゴールは、ベトナムにとっては痛恨だったはずだ。
一方の日本も、後半は遠藤航、守田英正、南野の立ち位置を遠藤のアンカー型で安定させ、明確に内容が上回るようになった。3-2の時間帯が長く、なかなか安心できなかったが、最終的には途中出場の堂安律や久保建英、上田綺世らが個の力を見せつけ、4-2で競り勝った。
もしもベトナムが2-2でOKという意識で前半をクローズし、後半を迎えていたら……、この試合はもう一つの迷宮に入ったかもしれない。とはいえ、優勝候補の日本を相手に勝利を志したフィリップ・トルシエの言葉に嘘はなく、彼らは常に勇敢だった。
まだアジアカップは始まったばかり。だが、すでにこの熱戦である。楽しい1か月になりそうだ。
取材・文●清水英斗(サッカーライター)
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一方の日本も、後半は遠藤航、守田英正、南野の立ち位置を遠藤のアンカー型で安定させ、明確に内容が上回るようになった。3-2の時間帯が長く、なかなか安心できなかったが、最終的には途中出場の堂安律や久保建英、上田綺世らが個の力を見せつけ、4-2で競り勝った。
もしもベトナムが2-2でOKという意識で前半をクローズし、後半を迎えていたら……、この試合はもう一つの迷宮に入ったかもしれない。とはいえ、優勝候補の日本を相手に勝利を志したフィリップ・トルシエの言葉に嘘はなく、彼らは常に勇敢だった。
まだアジアカップは始まったばかり。だが、すでにこの熱戦である。楽しい1か月になりそうだ。
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