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森保ジャパンを苦しめたトルシエ監督の指導哲学は健在。懐かしい“フラットスリー”を彷彿とさせた【アジア杯】

カテゴリ:日本代表

加部 究

2024年01月15日

ベトナムは善戦も日本の贅沢な戦力を前に…

ベトナム代表を率いて日本相手に善戦したトルシエ監督。写真:梅月智史(サッカーダイジェスト写真部/現地特派)

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[アジアカップ グループステージ第1節]日本 4-2 ベトナム/1月14日/アル・トゥママ・スタジアム

 フィリップ・トルシエの指導哲学は健在だった。

 5-4-1のベトナムは、決して引いてスペースを埋めるだけではなく、最終ラインは勤勉に上げ下げして揺さぶりをかけ、コンパクトな布陣を保ち、日本の攻撃陣をけん制する。あの懐かしいフラットスリーを彷彿とさせた。

 一方でベトナムの小さな戦士たちは、深い位置まで追い込まれても、狭いスペースを苦にせず、ショートパスを繋いでいく。24年前に日本代表をアジア王座に導いた指揮官は、ベトナムの国民性や選手たちの特性を踏まえたうえで、適切な道筋を示しているようだった。

 ベトナムの予想以上の技術と戦術の徹底で、最初からプレッシングで圧倒してしまおうとする日本の目論見にはそごが生じ、逆にベトナムには最大限の幸運が後押しした。用意しておいたセットプレーが2度立て続けに成功し、まさかの逆転劇を演じる。ただし、出来すぎのシナリオにベンチは沸いたが、むしろトルシエは望外の展開にも快哉を叫ぶわけでもなく、むしろ警戒を強めている様子だった。

 24年前に圧倒的な強さでアジアを制したトルシエは、翌年、自信満々で自身の母国フランスに乗り込み「勝てば私の銅像が立つ」と吹聴した末に、当時の世界チャンピオン(フランス代表)に0-5と大敗を喫した。しかし今回は日本との力の差をしっかりと把握し、アグレッシブな攻勢を受ける流れまで予期し、警戒を深めていたに違いない。

 前半のベトナムは、トップ下でプレーする19歳のグエン・ディン・バックが再三前を向いて仕掛ける余裕を与えられていた。実際、ベトナムの逆転弾も、遠藤航のヘディングが後方へ流れたボールに、グエン・ディン・バックが俊足を飛ばして追いつき、GKと1対1の状況を作りかけた時、菅原由勢の後方ファウル(警告)で得たFKから生まれている。
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 だが、さすがに両国の力関係を踏まえれば、ベトナムの善戦もそこまでだった。日本は、まさかのシナリオにもまったく浮足立つことなく、前半のアディショナルタイムで南野拓実と中村敬斗の落ち着き払ったフィニッシュワークで逆転。後半に入るとベトナム側に疲労が目立ち、個々の局面でボールホルダーへ寄せ切れなくなると、ゲームはワンサイドへと傾く。ベトナムは、ようやくアディショナルタイムに入り初めてのクロスを送ったほどで、後半はゴールに近づくことも出来なかった。

 史上最強と言われる日本代表は、当然ながら歴史的に例を見ないほど贅沢な戦力に恵まれている。

 カタール・ワールドカップ2戦目のコスタリカ戦(0-1)でターンオーバーを試み、手痛いしっぺ返しを食った森保一監督は、今度こそ優勝を目ざすためにも同等戦力の2チームを用意しようと周到な準備を進めている。

 今回招集したメンバーを見ても、大半が所属チームで主力を確約された選手で、逆に欧州で競争渦中の選手は外し、国内から未来の可能性を発掘している。また節目とともに「力のわっているベテラン」を大胆に見送り、アジアカップに連れて来たのは最盛期を確認済みの選手たちばかりだ。

 著しい右肩上がりが望める佐野海舟や毎熊晟矢らには積極的にチャンスを与えているが、いくら世論が騒いでも再び大迫勇也の力を借りようとは考えない。最近の招集傾向からは空前の選手層を抱えているからこその冷徹な覚悟が伝わってくるようで、この姿勢を見ていると現在重用ぶりが顕著な伊東純也や遠藤でも、指定席を確保しているとは言い切れないのかもしれない。

 ベトナム戦には、やや故障の懸念が残る久保建英以外は、現状のベストメンバーで臨んだ。ただし、アジアカップで痺れる競り合いを見込めるのは準決勝以降になる。逆にそれまで指揮官は、個々の選手たちのコンディションを見極め、競争を促していくはずだ。

 あえて万全ではない三笘薫や冨安健洋を招集したのも、ラスト2戦への期待値にほかならないと思う。

取材・文●加部究(スポーツライター)

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