布施にとってジェットコースターのような１年だった。２年生でボランチとしてレギュラーを掴み、インターハイに出場。１回戦の奈良育英戦、２回戦の富山第一戦はスタメン出場も、「あまりにも出来が悪すぎた」と振り返るように、調子が上がらず、３回戦からは３年生の荻原大地にレギュラーを奪われてしまった。

「３回戦でスタメンではなくなった時にすぐに切り替えられなくて、焦りましたし、落ち込んでしまった」が、その後にU-17代表として出場したバルコムカップで大活躍し、前述した通りU-17W杯の最終メンバーに名を連ねた。

　しかし、インドネシアの地で同年代の選手が躍動するなかで、布施は最後までピッチに立つことはできなかった。フィールドプレーヤーの中で１分も出場できなかったのは彼１人だった。だが、そこで大きな気づきを得ることができた。

「出番がなかったことは悔しかったですが、それより燃えるものが大きかった。世界の強度の高さだったり、そのなかで日本の選手がどう立ち回るかだったりを、直に肌で感じることができました。自分が得意としている守備の強度でも、同世代の選手たちは自分が奪いきれないようなところで奪い切ってマイボールにする。

　攻撃面でも自分が見えていないところを見ていて、そこに正確にボールを出すとか、自分より上の選手ばかりだった。ベンチで見ていても、自分にとってプラスになることばかりでした」
 

　ネガティブな状況でも、ポジティブに捉えられたのはスタッフ陣のアドバイスが大きかった。

「A代表の選手でのベンチでの立ち振る舞いの話をしてもらいました。堂安律選手はスタメンから外された後に、『このままじゃダメだ』という危機感を抱いて、ベンチでも声を積極的に出すようになったと聞きましたし、A代表の選手は自分が試合に出ていなくても、気持ちを落とさずにベンチからずっと声をかけ続けて、努力をし続けた結果、今の立ち位置があると聞いたので、自分もそこで沈むのではなくて、声をかけ続けて、A代表と同じことをできればいいと思えた」

　堂安だけではなく、遠藤保仁は2006年のドイツW杯においてフィールドプレーヤーで唯一ピッチに立てなかったが、次の10年の南アフリカW杯では絶対的な主軸としてベスト16進出に貢献。遠藤航も18年のロシアW杯メンバーに選ばれたが、出番はなし。だが、22年のカタールW杯では不動のレギュラーとなり、ドイツ、スペインを撃破する『ドーハの歓喜』の立役者となった。この話も代表期間中にしてもらった。