「水沼選手が交代していなければ、自分にキッカーの役目は回ってこなかった。ハーフタイムに誰が蹴るかということになって自分が指名されたわけですが、結果を出したい気持ちはあった」
本人曰く「たまたま」巡ってきたキッカーをこなすなかで、68分にCKからオウンゴールのきっかけを作り、終盤の84分には再びCKのチャンスから美しい軌道のボールで前田遼一のゴールをアシスト。FC東京のデビュー戦できっちりと結果を出した。
「デビューを飾るだけでなく、結果を出して次につなげたい想いがあったので、アシストできて凄く嬉しかったです。これまで試合に使われていない他の選手にとっても、励みになるかなと思います」
アシストを生んだ左足の鋭いクロスを語るうえで、太田宏介(現フィテッセ)の存在を忘れてはいけない。
「昨季まで(太田のプレーを)間近で見ることができたので、蹴り方のコツ、どこを狙えばいいのか指導してもらった。プロに入ってからこの1年で成長できたと思います」
ビン・ズオン戦で1アシストを決めたからといって、小川に驕りはない。「今回は駒野選手、室屋選手が離脱して自分にチャンスが巡ってきた」ことは十二分に理解している。だからこそ、「試合に出続けることが大事」と改めて気を引き締めていた。
“可愛い後輩”が活躍して、羽生もなんとなく嬉しそうだった。
「緊張していた割には良いデビュー戦になったと思います。まあ、Jリーグではまた違うストレスがかかってきますから、これからです。1試合活躍しただけで格好つけないようにと皆さんからも言っておいてください(笑)」
小川がデビュー戦で躍動できた背景には本人の努力はもちろん、3つの偶然と陰で支えたベテランの存在があった。
取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)