優れた選手の存在は、計り知れない相乗効果を生む。
フットボールというスポーツにおいて、ライバルの存在は見逃せない。それは時にストレスにもなりうるが、互角かそれ以上のライバルがいないと選手は慢心するか、驕ってしまう。
レベルの高いプレーを見せられたら、異なるポジションの選手でも身が引き締まるもので、なにより選手というものは本能的に高いスキルに対しては最高の刺激を覚える。優れた選手の存在は、計り知れない相乗効果を生むのだ。
育成の話から少し脱線するが、メッシが他の惑星からやって来たかのようなレベルまで成長したのも、「クリスチアーノ・ロナウドという同じく傑出した才能を持ったアタッカーが同時代にいたから」という声は少なくない。逆にC・ロナウドにとっても、メッシというライバルは成長を即す大きなカンフル剤になってきたはずだ。
世代にテーマを戻せば、日本でも1999年ワールドユースで決勝に進出したU-20代表には、小野伸二、高原直泰、稲本潤一、遠藤保仁、小笠原満男、本山雅志、中田浩二、加地亮、酒井友之らが一挙に顔を揃えていた。後にA代表経験者を11人、ワールドカップ経験者を7人も生んだこのジェネレーションは、「黄金世代」としてリスペクトを集めた。
「それぞれの選手がお互いの力を認め合っていた。プレーしていて楽しかった」
当時の選手たちが振り返っているように、多くの才能が一つの時代を共有したことで化学変化が起きたのだろう。この世代では、小野の存在が大きかったかもしれない。小野は間違いなく、20世紀に日本サッカーが生んだ最高傑作だった。
こうした作用を、指導者が意図的に起こすことは難しい。ジェネレーションはほとんど偶発的だからだ。周りが無理矢理ジェネレーションを作ろうとすると、「プラチナ世代」のように気まずい結果になってしまう。
「才能は生まれる。それも束になって」
そう言われるが、その法則がないからこそ、フットボールには浪漫があるのかもしれない。
文:小宮良之
【著者プロフィール】
小宮良之(こみや・よしゆき)/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『おれは最後に笑う』(東邦出版)など多数の書籍を出版しており、2016年2月にはヘスス・スアレス氏との共著『「戦術」への挑戦状 フットボールなで斬り論』(東邦出版)を上梓した。
レベルの高いプレーを見せられたら、異なるポジションの選手でも身が引き締まるもので、なにより選手というものは本能的に高いスキルに対しては最高の刺激を覚える。優れた選手の存在は、計り知れない相乗効果を生むのだ。
育成の話から少し脱線するが、メッシが他の惑星からやって来たかのようなレベルまで成長したのも、「クリスチアーノ・ロナウドという同じく傑出した才能を持ったアタッカーが同時代にいたから」という声は少なくない。逆にC・ロナウドにとっても、メッシというライバルは成長を即す大きなカンフル剤になってきたはずだ。
世代にテーマを戻せば、日本でも1999年ワールドユースで決勝に進出したU-20代表には、小野伸二、高原直泰、稲本潤一、遠藤保仁、小笠原満男、本山雅志、中田浩二、加地亮、酒井友之らが一挙に顔を揃えていた。後にA代表経験者を11人、ワールドカップ経験者を7人も生んだこのジェネレーションは、「黄金世代」としてリスペクトを集めた。
「それぞれの選手がお互いの力を認め合っていた。プレーしていて楽しかった」
当時の選手たちが振り返っているように、多くの才能が一つの時代を共有したことで化学変化が起きたのだろう。この世代では、小野の存在が大きかったかもしれない。小野は間違いなく、20世紀に日本サッカーが生んだ最高傑作だった。
こうした作用を、指導者が意図的に起こすことは難しい。ジェネレーションはほとんど偶発的だからだ。周りが無理矢理ジェネレーションを作ろうとすると、「プラチナ世代」のように気まずい結果になってしまう。
「才能は生まれる。それも束になって」
そう言われるが、その法則がないからこそ、フットボールには浪漫があるのかもしれない。
文:小宮良之
【著者プロフィール】
小宮良之(こみや・よしゆき)/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『おれは最後に笑う』(東邦出版)など多数の書籍を出版しており、2016年2月にはヘスス・スアレス氏との共著『「戦術」への挑戦状 フットボールなで斬り論』(東邦出版)を上梓した。