今回は１トップに入るのは浅野拓磨（ボーフム）か、古橋亨梧（セルティック）か分からないが、中村が左から飛び込んでくる回数が多ければ多いほど、ゴール前に厚みが生まれる。

「スタッド・ランスでは伊東純也選手が右にいて、間違いなく突破がある。純也君が突破した時に逆サイドからクロスに入る意識は前より強くなったと思います。１枚が潰れて僕のセカンドが絶対にあるし、そこが一番点を取れるタイミング。代表でも一番のスプリントで入っていきたいですね」と、中村も自身のストロングを強調していた。それを思い切り出せれば、他のライバルたちに差をつけられる。

　そのうえで、左からの局面打開も増やしていきたいところ。今季のS・ランスでもそのあたりは特に意識している点だ。

「僕はボールを持った時にカットインが結構、得意で、縦にも行けるようになるっていうのは１つの目標。今は最初にパッと見るのは純也君のところ。一番遠くから見て、確率が高そうなところに出す感じですね」とクラブでの役割を語っていたが、それとまったく同じことが代表でもできるだろう。

　今回は右サイドに伊東が入るとも限らないし、仮に久保建英（レアル・ソシエダ）だったとしても、しっかり彼を見て、長いクロスを供給することはできるはず。中村がお膳立てして、久保が仕留めるようなパターンもあっていい。
 

　今回、三笘タイプの奥抜が追加招集されているが、中村がドリブラーとしても異彩を放つようになれば、新たな戦力が入り込む余地はなくなるかもしれない。最終的に「得点も仕掛けもクロスも守備もOK」という状況になっていけば、近い将来、三笘からポジションを奪う道も開けてくる。森保監督が２人の使い分けを真剣に模索するようになれば理想的だ。

「（敬斗は）仕掛ける力もありますし、シュートはすごく上手いですし、人を使いながら上手くポジションを変えたりとか工夫もできる。良い選手だなと思います」

　主力ボランチの守田英正（スポルティング）が太鼓判を押すように、中村には彼なりの良さと伸びしろがある。三笘とは異なるタイプの左サイドが躍動し、状況に応じて戦い方を変えられるチームになれば、日本は本当の意味で世界トップを目ざせる状況になるだろう。

　そういう意味でも、今年に台頭した23歳の一挙手一投足は注目に値する。まずは９月のトルコ戦に続くゴールを期待したいものである。

取材・文●元川悦子（フリーライター）

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