確かに今の日本代表には前線のターゲットマンタイプが少ない。そんななか、町野はゴール前で起点になれるし、中盤に下がってゲームメイクにも関与できる。ロングスローも投げられるし、FKも蹴れる万能型だ。

　一種独特のストライカーを有効活用できるようになれば、森保監督の戦い方の幅も広がるはずだ。そう思わせるだけの高いパフォーマンスをキールで示し続けるしか、代表復帰の道はないだろう。

「前線で収めるという部分では、相手ディフェンダーとゼロ距離の時の身体の使い方はまだ今一つですね。スペースがあれば、ボールをそこまでコントロールせずに逆を取ったりするのは簡単なんですけど、捕まれたりした時は難しさがある。その課題を克服するためには、やっぱりやり続けるしかないと思います。

　僕はドイツ２部なので、バイエルンとかドルトムントと戦う機会はなかなかないですけど、そういう相手とぜひやってみたい。ドルトムントは個人的に好きなチームですし、早くそのレベルでやれるようになりたいです」と、町野は短期間でのステップアップを思い描いているという。

　９月30日に24歳の誕生日を迎える彼にとって、ここ１～２年は自身のキャリアを大きく左右する重要な時期になるはずだ。
 

「2026年のワールドカップイヤーには、CLに出られるレベルのクラブに所属していることが目標なんで、正直、あまり時間はないですよね。今の僕の年齢でドイツ２部にいるのは、やっぱり成長曲線が遅いという危機感はあります。

　実際、キールにいる選手を見ても、ローテみたいに18歳で活躍している若手も少なくない。そういう環境なので、僕は本当にこの１年に勝負を懸けないといけない。今季前半戦で二桁ゴールを奪って、冬の移籍市場、遅くとも来年の夏にはステップアップするくらいの勢いがないとダメだと思います。

　今のチームの目標は『勝点40』を確保すること。昨季は失点が多かったので、まずは守備の改善に取り組んで、２部残留を確定させることが最優先という考え方なんでしょう。

　そのためにも自分がゴールを量産することが重要。キールは今まで一度も１部に上がったことがないクラブですけど、今の一体感があれば上を目ざすことも可能だと思います。

　自分も『ワールドカップでドイツを破った日本代表のフォワードが来た』と鳴り物入りで迎えられた以上、チームを押し上げないといけないですね」

　そう語気を強める町野。キールで着実に力をつけ、階段を駆け上がり、３年後には過去にW杯で日本を勝たせてきた偉大な先人たちに肩を並べていられれば理想的だ。