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「プロ最大の喜びは何か」と訊かれて意外な回答。権田修一が歴史的勝利のドイツ戦やスペイン戦を選ばなかった”納得の理由”

カテゴリ:Jリーグ

白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

2023年09月03日

エスパルスでの悔しさはエスパルスでしか…

2009年のリーグカップ制覇(写真)は権田にとって特別な思い出だ。写真:サッカーダイジェスト

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 すいも甘いも知る権田選手にとって、プロ最大の喜びは何か。「う~ん、なんですかね」と言いながらも、答ははっきりしていた。

「(2009年の)リーグカップ優勝はめちゃくちゃ嬉しかったです。というのも、あの年は(FC東京で)自分が出場しはじめたシーズンで結構きつかったんです。最初の2試合(3月7日の新潟戦、3月14日の浦和戦)で7点取られて、その後も自分のミスで負けた試合がたくさんあったので、逆に結果が出た時はものすごく嬉しくて。そこに自分が携われることができて幸せだなと」

 カタール・ワールドカップのドイツ戦やスペイン戦での勝利を挙げるだろうと予想していたから、意外な答だった。

「ワールドカップに出場するとか、他にも嬉しいことはありますよ。でも、形としてチャンピオンになっていない」

 要するに、喜び=達成感、それが権田選手の定義というわけだ。だから、FC東京時代に成し遂げた天皇杯制覇(2011年度)も“喜び”のひとつに入る。となると、Jリーグでの心残りはJ 1優勝か。

「FC東京でJ1制覇をしたいという想いは強かったですよ。今季はエスパルスで、J2で戦っていますけど、来年J1を制すための今と思ってやっています。それが実現したら、『去年から優勝にこだわってきたからだよね』となるはずなので、今のしんどさ、キツさがいずれ喜びに変わるだろうと信じてやっています」

 それでも、ドイツやスペインに勝った喜びは半端ないのでは? 単純にそう思ってしまう。しかし、権田選手の捉え方は違う。

「そりゃあ、彼らに勝った瞬間は嬉しいですよ。でも、そこでワールドカップは終わらない。クロアチアに勝ってベスト8に行けていたとしても完結しないじゃないですか。質問は『プロ最大の喜びが何か』ですよね? となると、ドイツ戦やスペイン戦ではない。クロアチアに勝てば、その先にもっと嬉しい出来事があったはずと考えると、悔しさのほうが勝ります」
 
 実は、カタール・ワールドカップ前、権田選手のメンタルコンディションを心配していた。そう告げると、権田選手は「ですよね」とすかさず相槌を打つ。  

 昨季のJ1リーグ最終節の札幌戦で4失点、しかも清水はJ2降格。こんな状況下で、ワールドカップを戦えるのか、精神的にボロボロではないのか、そう懸念していたが、本人はあっさりと否定する。

「別物と考えていました。エスパルスでの悔しさはエスパルスでしか晴らせないし、日本代表での悔しさは日本代表でしか晴らせない。ワールドカップの結果に関係なく、エスパルスで新シーズンが始まる時は悔しさからスタートするわけです」

 聞く側が理解できるよう、丁寧に説明してくれる権田選手らしい言い回しだ。クラブと日本代表の活動をごちゃ混ぜにせず、それぞれ“別物”と捉えている彼の主張は続く。

「オンとオフじゃないですけど、日本代表での自分とエスパルスでの自分をしっかりと切り替えるようにしました。FC東京時代にはクラブに加えて、アンダー世代の代表、A代表と3つ絡んだ時期もあって、その多忙な時に学びました。切り替えは大事だって。試合が終わった瞬間に次のゲームにシフト、そういう考え方を大事にしています」

 若いうちに切り替えを身に付ける。これはプロとして長生きするうえで重要なポイントになるはずだ。

<パート4に続く>

取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)

<選手プロフィール>
権田修一(ごんだ・しゅういち) 1989年3月3日生まれ、東京都出身。187センチ、84キロ。さぎぬまSC-FC東京-15-FC東京U-18-FC東京-ホルン(オーストリア)-鳥栖-ポルティモネンセ(ポルトガル)-清水。ワールドカップ参戦2回(14年、22年)。12年のロンドン五輪にも出場と、国際経験が豊富。Jリーグ屈指の実力者で、一切の妥協を許さないスタンスはプロの鑑と言える。


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