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【セリエA現地コラム】「ゼロトップ・システム」の生みの親。5年半ぶり復帰のスパレッティはローマをどう変える?

カテゴリ:連載・コラム

片野道郎

2016年01月21日

初戦からスパレッティの狙いが明確に表われていた。

スパレッティはシステムを4-2-3-1に変更。トップ下で起用したナインゴランが先制点を奪ったところまでは、理想的な展開だったが……。(C)Getty Images

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 スパレッティが離れていた5年半の間に、ローマは大きく様変わりした。オーナーはセンシ家からアメリカ人のパロッタに替わり、チームの顔ぶれもほぼ一新。かつてスパレッティの下でプレーした選手で今も残っているのは、トッティとダニエレ・デ・ロッシ、そして控えGKボグダン・ロボンツの3人だけだ。
 
「まずは選手のクオリティーをこの目で確かめる必要がある。しかし時間を無駄にはできない。ライバルはすごいスピードで走っており、我々は遅れを取っている。すぐに結果を出さなければ、2か月後に私はローマ中を引きずり回されてさらしものにされるかもしれない」
 
「当面の目標は、誰が見てもこれがローマのサッカーだとわかる明確なスタイルを確立し、コンスタントに結果を積み重ねること。チームは私の要求にすぐに応えて、最初の試合からはっきりとした変化を見せてほしい」
 
 就任後初めての会見でこう語ったスパレッティだが、初戦となった1月17日のヴェローナ戦は1-1の引き分けで、流れは変えられなかった。
 
 今シーズンのローマは開幕当初、よりポゼッション志向を強めて主導権を握るというスタイルを志向したものの早々に行き詰まり、その後は重心を下げてのカウンター志向へと舵を切っていた。
 
 しかし、その攻撃はモハメド・サラーやジェルビーニョのスピードを活かした単独突破への依存度が高く、組織的な連携はむしろ低下してチームが間延びする傾向が強くなるなど、攻守両局面に問題を抱えて混迷状態に陥っていた。
 
 スパレッティはそれを受けて、今シーズンの基本形だった4-3-3から4-2-3-1にシステムを変更。攻撃的なプレースタイルを持つミラレム・ピャニッチをデ・ロッシと共にボランチに起用してゲームメイクを委ね、そのピャニッチよりも守備的ながらテクニックと運動量を兼ね備えたラジャ・ナインゴランをトップ下に上げるという新機軸を打ち出した。
 
 かつてローマの中盤を支えたシモーネ・ペッロッタ(元イタリア代表)と同じように、ナインゴランにオフ・ザ・ボールで前線に走り込んでフィニッシュに絡む役回りを期待したのだ。
 
 このヴェローナ戦に限れば、ボールの動きにも人の動きにもまだぎくしゃくしたところが目立ち、組織として機能するまでには至っていないという印象は否めなかった。
 
 とはいえ、その戦いぶりにスパレッティの戦術的な狙いが表われていたのは事実だ。
 
 やや低い位置にコンパクトな守備ブロックを敷いて組織的にボールを奪い、そこからは極力横パスを使わず前方のスペースにグラウンダーのパスをつなぎ、手数をかけず一気にフィニッシュに持ち込むというのがそのコンセプト。
 
 指揮官は試合後、次のように語っている。
 
「攻撃では何度かチャンスを作ったが十分に活かせなかった。守備ではカウンターを許す場面が多過ぎた。攻守のバランスを見出さなければならない。良い点もいくつかあったが、まだやらなければならない課題はたくさんある」
 
 首位ナポリとの勝点差は9まで広がり、CL圏内(3位)までも5ポイント差、後ろを振り返れば6位ミランが3ポイント差まで追い上げてきている。
 
 次の相手は10連勝中と絶好調の2位ユベントス。はたしてローマはどんな戦いを見せるのか。
 
文:片野道郎
 
【著者プロフィール】
片野道郎/1962年生まれ、仙台市出身。95年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させる。『ワールドサッカーダイジェスト』では、現役監督のロベルト・ロッシ氏とのコラボによる戦術解説や選手分析が好評を博している。
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