「最初のボールタッチが大事」
気になるのが、この冬のマンチェスター・ユナイテッドからの関心だろう。だがマインツのマネジャー、クリスティアン・ハイデルは「そのようなオファーはないし、クラブの代表者も代理人も、仲介に立つ者も、誰ひとりとして正式な話は聞いていない」と、可能性をきっぱり否定する。
無論、武藤も後半戦でのさらなる飛躍を期している。ヘルタ・ベルリンのセバスティアン・ラングカンプ、ドルトムントのソクラティス・パパスタソプーロスのような一線級のセンターバックとの激しい対決が、やる気を高めたようだ。
「相手選手のマークを外すためには最初のボールタッチが大事。あと一歩早くボールに触らなければいけないし、もっと速くディフェンダーの裏に抜け出さなければいけない。監督から求められているのはそういうところ。後半戦はもっと得点を決めるつもりだ」
この半年間、肉体的にはきつかったという。太腿部の筋肉と足首の負傷に悩まされながらも、志願してピッチに立ちつづけた。「とにかくプレーしたかった。せっかくもらったチャンスをフイにしたくなかったから」。加えて、日本代表戦に招集されたため、ドイツと日本の往復移動を余儀なくされた。もちろんこれも初めての経験で、「思ってたよりもハードだった」と吐露する。今後もコンディション調整の面で大きな障壁となるはずで、折り合いをつけていかなければならない。
それでも、周囲からは確固たる評価を得た。なかでも専門誌の『キッカー』は、前半戦のベストフォワード部門で7位に選出。これには「すごく光栄」と感激したようで、大きな自信につながったようだ。
東京の大学(慶応大学)で経済学を学び、プロのサッカー選手になっていなかったら、医学部に編入して医者を目指していたかもしれないと明かした。叔父のひとりが医者で、「18歳のときに一度考えた」のだという。「でもそれはほんの少しの間だけ。サッカーで上手くいったのがなにより嬉しいし、いまはこうしてブンデスリーガでプレーできているわけだし」。医学を勉強することは、キャリアを終えたあとの選択肢として残っていると話す。
マインツで多くの日本人記者たちに囲まれるのは、どちらかというと、あまり居心地が良いものではないようだ。「試合のあとになにか訊かれるのは好きじゃない。特に自分のプレーが悪かったときはね」。一方で、自分に大きな注目が集まるのは喜ばしいことだという。
いつでも自然体で、謙虚な姿勢を崩さない武藤。「チュース」(ドイツ語で、さよなら)と微笑み、ロビーをあとにした。茶目っ気たっぷりである。
文:ラインハルト・レーベルク
翻訳:円賀貴子
【著者プロフィール】
Reinhard REHBERG(ラインハルト・レーベルク)/『ライン新聞』で1987年から27年にわたってマインツの番記者を務める。現在はフリーで、「マインツァー・アルゲマイネ新聞」のコラムニストを務める一方、監督業を志す指導者に向けたコーチングも行なっている。マインツ出身、57年7月30日生まれ。
無論、武藤も後半戦でのさらなる飛躍を期している。ヘルタ・ベルリンのセバスティアン・ラングカンプ、ドルトムントのソクラティス・パパスタソプーロスのような一線級のセンターバックとの激しい対決が、やる気を高めたようだ。
「相手選手のマークを外すためには最初のボールタッチが大事。あと一歩早くボールに触らなければいけないし、もっと速くディフェンダーの裏に抜け出さなければいけない。監督から求められているのはそういうところ。後半戦はもっと得点を決めるつもりだ」
この半年間、肉体的にはきつかったという。太腿部の筋肉と足首の負傷に悩まされながらも、志願してピッチに立ちつづけた。「とにかくプレーしたかった。せっかくもらったチャンスをフイにしたくなかったから」。加えて、日本代表戦に招集されたため、ドイツと日本の往復移動を余儀なくされた。もちろんこれも初めての経験で、「思ってたよりもハードだった」と吐露する。今後もコンディション調整の面で大きな障壁となるはずで、折り合いをつけていかなければならない。
それでも、周囲からは確固たる評価を得た。なかでも専門誌の『キッカー』は、前半戦のベストフォワード部門で7位に選出。これには「すごく光栄」と感激したようで、大きな自信につながったようだ。
東京の大学(慶応大学)で経済学を学び、プロのサッカー選手になっていなかったら、医学部に編入して医者を目指していたかもしれないと明かした。叔父のひとりが医者で、「18歳のときに一度考えた」のだという。「でもそれはほんの少しの間だけ。サッカーで上手くいったのがなにより嬉しいし、いまはこうしてブンデスリーガでプレーできているわけだし」。医学を勉強することは、キャリアを終えたあとの選択肢として残っていると話す。
マインツで多くの日本人記者たちに囲まれるのは、どちらかというと、あまり居心地が良いものではないようだ。「試合のあとになにか訊かれるのは好きじゃない。特に自分のプレーが悪かったときはね」。一方で、自分に大きな注目が集まるのは喜ばしいことだという。
いつでも自然体で、謙虚な姿勢を崩さない武藤。「チュース」(ドイツ語で、さよなら)と微笑み、ロビーをあとにした。茶目っ気たっぷりである。
文:ラインハルト・レーベルク
翻訳:円賀貴子
【著者プロフィール】
Reinhard REHBERG(ラインハルト・レーベルク)/『ライン新聞』で1987年から27年にわたってマインツの番記者を務める。現在はフリーで、「マインツァー・アルゲマイネ新聞」のコラムニストを務める一方、監督業を志す指導者に向けたコーチングも行なっている。マインツ出身、57年7月30日生まれ。