今大会は、初戦で初芝橋本に１－０の完封勝利を収めて波に乗ると、２回戦では国見高の２つ上の先輩である植田洋平監督が率いる帝京第五を２－０で撃破。３回戦では金光大阪を２－０で破る。

　そして準々決勝では、関東の強豪・矢板中央の堅守をこじ開けることはできなかったが、平田大耀と中浦雄太のCBコンビを軸に、相手の持ち味である強度の高いカウンターを弾き返し、冒頭で触れた通り、スコアレスドローのPK戦の末に勝利。全試合無失点でベスト４進出を決めた。

「春先からしっかりとみんなでトレーニングを積んできた成果だと思います。去年のチームはタレントがいましたが、今年はそうじゃないからこそチームで戦うと決めていました」と、平田が自信の表情を見せて語ったように、これまで積み上げてきた、どんな相手でも、どんな時間帯でも崩れない守備と、奪ってからの判断の質を発揮するサッカーの質は、試合を重ねるごとに向上している。

「インターハイ出場権を選手たちが掴んでくれた時から、ファイナル進出を狙っていました。ファイナルに残ることこそが大きなインパクトを残せると思いましたし、それがこれからの国見に絶対に必要なことだと思っているので」
 

　冷静沈着な表情と言葉のトーンを崩さない木藤監督だが、それは平静を装っているのではなく、就任当初から一切ブレない信念と覚悟が滲み出ているからだった。木藤監督に「ベスト４は『やっと来た』という感じですか？」と聞くと、変わらずのトーンでこう答えた。

「そうですね、僕の中ではやれることをコツコツやってきたので、あまり驚きはないです。もちろん嬉しくはないということは嘘になりますが、『ついに来たぞ！』というのはなくて、意外と冷静に捉えています。勝った瞬間は、きちんとリカバリーして、何とかコンディションを整えてゲームを迎えさせようと、次の試合のことを考えていました」

　次なる相手は桐光学園。強烈な攻撃力と安定した守備力を持つ難敵だが、何か特別なことをするのではなく、これまで通りに平常心と野心を持って臨むだけであることが、目標達成に向けて重要なことであると木藤監督は理解している。覚悟を決めた男は一切ブレない。

取材・文●安藤隆人（サッカージャーナリスト）

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