【高校選手権】一発勝負の波に吞み込まれた大津。選手権史に残る激闘の舞台裏

カテゴリ:高校・ユース・その他

平野貴也

2016年01月08日

両チームがPK戦に備えてGKを交代した直後にドラマが……。

キャプテンの野田は、「自分たちが泣いている場合じゃない」と試合に出られない仲間たちを思いやった。敗れたものの試合後の態度も堂々たるものだった。写真:徳原隆元

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 同点に追いついた直後の後半17分には、こぼれ球を杉山が狙うシーンや、後半36分に右から左へ展開し、一美にボールを渡してフィニッシュを狙う場面もあったが、決めきれなかった。大津の平岡総監督は、試合後に「あの後、いくつかチャンスがあるなかで追い越さなければいけなかった」と繰り返した。

 そして、後半終了間際に両チームがPK戦に備えてGKを交代した直後に、決勝点が生まれた。大津は、またも前橋育英のカウンターを浴び、ついに力尽きた。

 プリンスリーグ九州でわずか1敗、プレミア参入戦も制した強さを見せられたとは言い難い。いきなり、このカードでなければ……という思いもある。それでも強豪対決で記憶に残る死闘を演じた。

「最後まで互いに諦めずにやった少しの差が、ああいう結果になったのではと思う」と話した指揮官の表情に悔しさがにじみ出ていた。ただ、試合後の監督、選手の態度は立派だった。声援をくれた観衆に感謝を示し、取材対応の場でも負け惜しみをぐっとこらえた。

 主将の野田裕喜は「出ている11人より、3年間で一度もAチームに入れず、スタンドで応援していた仲間のほうが何倍も悔しいはず。自分たちが泣いている場合じゃない、胸を張っていこうと仲間に言った。プレッシャーはなかった。プロになるのだし、注目されてナンボだと思う。2回追いついたし、悲観する内容じゃないと思うけど、初戦という難しさが全体の硬さにつながったのかと思う」とハッキリと話した。

 あの迫力ある攻撃を、毅然とした彼らの雄姿を、もっと見たかったと思わされる敗者の姿がそこにあった。
 
取材・文:平野貴也(フリーライター)
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