“ユース年代日本一”の鹿島が勝負重視の育成をする理由と、その批判にまつわる一考察

カテゴリ:高校・ユース・その他

平野貴也

2015年12月15日

育成で重視するのはプロの世界で通じる「競争に生き残る力」を身につけること。

鹿島ユースの熊谷監督は、今回の優勝を「アントラーズスピリッツの勝利」と振り返った。(C) J.LEAGUE PHOTOS

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 鹿島には、鹿島の良さがあり、鹿島の事情がある。ジーコに叩き込まれた勝利への執念、強いトップチームがあるが、都市部に比べれば人材獲得の面で後れを取る環境は否めない。さらに、日本全体を見れば、鈴木満強化部長は「Jクラブがない県が少なくなり、新卒の有力選手の獲得は難しくなってきている」と話す事情もある。
 
 現在は鹿島だけでなく、日立やつくばにも育成の拠点を置いているが、関東には競争相手が多く、自前の育成は必要だが、他と同じスタイルで上回るのは難しいのだ。だからこそ、鹿島の良さを活かす手順を徹底している。鹿島が育成でまず重視するのは、個としても、チームとしても、プロの世界で通じる「競争に生き残る力」を身につけることだ。
 
 ただし、守って蹴って勝ち続ければ良いと思っているわけではない。中村ジュニアユース監督は「理想は、トップチーム。守備が堅いし、速攻もするけど、遅攻でも崩せる」と話し、熊谷ユース監督も昨冬のJユースカップを制した際に「練習では攻撃もやっているけど、試合は試合。まだ、試合で発揮できるだけの積み上げは、守備しかできていないということ」と堅守速攻というスタイルをベースに置いているわけではないことを説明していた。
 
 技術、戦術理解、プレーの多様性も必要なのは当然で、手をつける順番が違うだけという考え方だが、クラブの外の人間は試合しか見る機会はなく、理解を得るのは難しい面がある。
 
 その点、今回の決勝戦では、昨冬との違いを見せてアピールできたという部分が大きい。中盤で攻守にわたって活躍したMF平戸太貴が「昨年は、相手にずっとボールを持たれて、ベタ引きでカウンターしかなかった。今年は前から取りに行って中盤でセカンドボールを拾ってからショートカウンターを仕掛けたり、奪った後に何本かパスをつないで遅攻を展開したりすることもできた。チームとして成長できた部分だと思う」と話したように、ゴール前の人数を増やして守るのではなく、中盤で相手を食い止める狙いを持ち、それを形にしてみせた。
 
 攻撃面でも速攻だけに頼らず、パスをつないで遅攻から個人技や連係を活かして突破を図る場面も見られた。見た目にも彼らが技術や戦術面で進歩していることを示せたはずだ。
 
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