【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の四十六「育成に潜む矛盾」

カテゴリ:特集

小宮良之

2015年11月26日

恵まれたクラブ出身者よりも、ハード面の遅れの目立つ高体連出身選手のほうが伸びしろを感じさせる。

日本でも、育成の矛盾は指摘される。環境の恵まれたJクラブの下部組織出身者より、高体連出身の選手が伸びしろを感じさせる傾向も。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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「ハード面を整える」
 
 Jリーグはそう躍起になってきたし、その努力には敬意を表したい。芝生のグラウンドを増やすことは、善であって悪ではない。しかしながら、真のクラッキ(一流選手)はどこからでも、むしろ整っていない環境から生まれている。芝生でのプレーに子どもたちが慣れてしまったら、そこに甘えが生じる。恵まれた環境にすれば良いわけではないのだ。
 
 蹴りやすいボールを人工芝で蹴る子どもor飛ばない重いボールを硬い土のグラウンドで蹴る子ども。
 
 どちらが本当に技術を上達させられるのか? その答に育成環境の本質があるのかもしれない。
 
 Jリーグが創立して20年以上経ち、各クラブの下部組織は充実した。しかし過去4大会連続でU-20ワールドカップ出場を逃すなど、ユース年代はアジアですら勝てなくなった。若手の台頭はかつての勢いが消え失せ、プロになってから伸び悩むケースが多い。恵まれたクラブ出身者よりも、ハード面の遅れの目立つ高体連出身選手のほうがむしろ伸びしろを感じさせる。この現実は直視するべきだろう。
 
 育成の革新性や発展性が失われるべきではないし、“放置する”ことが正解なはずはない。しかし、大人が良かれと思って与えてしまう環境が子どもたちをスポイルする、少なくとも、その可能性があることは知っておくべきだ。自分で上手くなる論理を見つけられた子どもだけが成長を遂げているという、厳然たる事実があるのだから。
 
 サッカーに英才教育は存在しない。
 
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。01年にバルセロナへ渡りライターに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写。近著に『おれは最後に笑う』(東邦出版)。
 
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