前半の終了間際に右インサイドハーフのマット・オライリーのロングパスから３点目を奪った古橋の決定力も、今のチームに必要不可欠である。このシーンでも一瞬の動き出し、DFの背後に抜け出す駆け引きや身体の入れ方など、あらゆる面で見事なフィニッシュワークだった。

　得点後、一時的にVAR判定の対象となり、本人もヒヤリとしただろうが、無事に認められ、リーグ得点数が18に伸びた。「今季はリーグ戦20ゴール」を目標に掲げる彼にとって、ノルマ達成まであと２つ。この調子なら今月の早い段階でクリアし、さらに記録を伸ばしそうな勢いだ。

　それでも、本人は「今日ももっと決められるチャンスが、たくさんあったなかで、１点しか取れなかった。チームが勝てましたし、本当に嬉しいですけど、個人としてはまだまだ成長しなければいけないと思いました」と自分に厳しかった。

　このような発言をするのも、今季の前半戦だけで二桁ゴールを奪いながら、カタールW杯の日本代表メンバーから漏れたことが大きいのだろう。「もっと幅広い役割をこなせる選手にならないとダメ」という自覚を強めたからこそ、自らに高いハードルを課しているのではないか。

　2021年夏にセルティックに赴いて、早いもので１年半。28歳になったこともあり、早く次のステップに進まなければいけないという焦燥感のようなものも強いはずだ。その悲願を叶えようと思うなら、スコットランドで突き抜けた存在になるしかない。
 

　そんな野心が今の古橋からは色濃く感じられる。ガツガツと泥臭くゴールに向かっていく姿勢は実に清々しい。それが高い領域へのステップアップにつながってくれれば理想的だ。

　この３人がセルティックをけん引し、日本人選手の価値を高めてくれれば、それに続く小林友希や岩田も持てる能力をより発揮しやすくなる。小林は左利きのDFとしてビルドアップ能力の高さをアピールしているし、岩田もまだ短時間の出場だが、アンカーの位置で期待されている。彼らが揃って個の力を一気に引き上げてくれれば、2026年北中米W杯まで続投が決まった森保一監督も喜ばしい限りだろう。

　古橋には一つひとつゴール数を積み重ねることを求めたいし、前田や旗手も得点に絡む仕事を増やしつつ、多彩な仕事をこなせる多様性を身につけるべき。シーズンの佳境を迎えるここからが非常に楽しみだ。

取材・文●元川悦子（フリーライター）

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