• トップ
  • ニュース一覧
  • 「ペレがいなければジョーダン・ブランドは生まれていなかった」「国家を動かす力も持っていた」“サッカーの王様”は何が偉大だったのか

「ペレがいなければジョーダン・ブランドは生まれていなかった」「国家を動かす力も持っていた」“サッカーの王様”は何が偉大だったのか

カテゴリ:ワールド

リカルド・セティオン

2023年03月07日

「ペレはサッカーの神だ。人間じゃない」

ペレはワールドカップを3度制している唯一の選手だ。(C)Getty Images

画像を見る

 かつて日本の読売クラブ(東京ヴェルディの前身)で監督を務めたこともあるペペは、おそらくペレをもっとも身近で見てきた元チームメイトだ。サントスで10年、そして代表でも10年苦楽を共にしたそのペペが、盟友をこう語っている。ある記者との問答だ。
 
「サントスで最高のサッカー選手は誰ですか?」
「私だ」
「……ペレではないのですか?」
「ペレはサッカーの神だ。人間じゃない。だから選手としたら私が一番だ」
 
 ペレとはそんな存在なのだ。
 
 ペレは国際オリンピック委員会(IOC)からのお墨付きも得ている。IOCはペレを「20世紀最優秀アスリート」として顕彰した。サッカーだけでなく、すべてのスポーツ選手の頂点にペレは君臨したのだ。ちなみにペレにはオリンピックの出場経験がない。それでもIOCはペレを称揚した。
 
 たしかに、ペレはスポーツ界の絶対的な基準点として存在している。例えば、モハメド・アリは「ボクシング界のペレ」、ウサイン・ボルトは「陸上界のペレ」と呼ばれるだろう。しかし、「〇〇界のマラドーナ」とは決して呼ばれない。つまりはそういうことだ。
 
 サッカーをスペクタクルとして輝かせ、グローバルなエンターテインメントに昇華させたのもペレだった。
 
 1958年スウェーデンW杯の決勝。ボールを浮かせて相手の頭上を破る“シャペウ”からペレは鮮やかにゴールを奪った。あまりの華麗さに、ストックホルム郊外のロースンダ・スタジアムを埋めた4万9000人は万雷のスタンディングオベーションを贈った。ペレのこのゴールをきっかけに、サッカーが優良なコンテンツになると確信したテレビ業界はW杯の試合中継を拡大し、その思惑通りサッカーは人気スポーツとして世界中に一気に広がっていった。
 
 70年のメキシコ大会では、そのペレのプレーを世界の人々がテレビで目撃した。
 
 サッカーに商機を見出したのはテレビだけではない。『アディダス』と『プーマ』が広告塔としてペレを奪い合った。優秀な選手にはどんなPRよりも大きな宣伝効果があるとペレが気づかせたのだ。ペレが存在しなければ『ナイキ』のジョーダン・ブランドも生まれていなかっただろう。
 
 ペレは国家を動かす力も持っていた。
 
 世界ナンバーワンの人気スポーツとなったサッカーが、どういうわけか普及せず、“不毛の地”と呼ばれていた国がある。アメリカだ。サッカーをどうにか広めようと時の国務長官ヘンリー・キッシンジャーは考え、『ワーナー・ブラザース』を引き込んで一計を案じた。当時の国内リーグのNASL(北米サッカーリーグ)にペレを連れてくることで話はまとまった。
 
 74年にサントスを退団したペレは事実上引退していた。それをキッシンジャーは外交ルートを使って半ば強引にピッチに呼び戻したのである。多額の援助金と引き換えにブラジル政府を動かし、ペレの説得に当たらせたのだ。
 
 アメリカに降り立ったペレがまず向かった先はホワイトハウス。アメリカ人以外のアスリートでホワイトハウスに入ったのはペレが初めてだった。
 
 ペレの訃報が伝わると、世界各国でペレの偉大さが語られ、在りし日の映像がリピートされた。こうしてその功績を改めて振り返ることで、「〇〇はペレより上か」という不毛な論争に早く終止符が打たれるよう望むばかりだ。
 
 ペレは唯一無二なのだ。
 (後編に続く)
 
文●リカルド・セティオン
翻訳●利根川晶子
 
【著者プロフィール】
1963年8月29日生まれ、ブラジル・サンパウロ出身。ジャーナリストとして中東戦争やユーゴスラビア紛争などを現地取材した後、社会学としてサッカーを研究。スポーツジャーナリストに転身する。8か国語を操る語学力を駆使し、世界中を飛び回って現場を取材。多数のメディアで活躍する。FIFAの広報担当なども務め、ジーコやカフーなどとの親交も厚い。現在はスポーツ運営学、心理学の教授として大学で教鞭も執っている。
 
※『ワールドサッカーダイジェスト』2023年2月2日号より転載
 
【関連記事】
「GKもやってのけた」「常に誠実で丁寧な物腰」“王様”ペレの凄さと素顔がわかるエピソード
「後継者と言われ笑っていた。ありえない」怪物ロナウドが逝去したペレを回想「彼こそが真のフェノーメノ」
「バチバチしてるの初めて見た」「ケンカするんかと」伊東純也が激怒!元ブラジル代表DFとの睨み合いが反響!何があった?
ハーランド、ウーデゴー…なんとミトマ!元英代表DFが今季の“プレミア年間MVP候補”6人に三笘薫を選出!「毎週良いプレーをしている。彼ほど…」
「なんだあいつは!」内田篤人が明かした、元鹿島監督ザーゴが“笑うほど上手かった”日本人CBとは?「プレスが全然はまらなくて…」

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト いざアジア王者へ!
    5月10日発売
    悲願のACL初制覇へ
    横浜F・マリノス
    充実企画で
    強さの秘密を徹底解剖
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト ガンナーズを一大特集!
    5月2日発売
    プレミア制覇なるか!?
    進化の最終フェーズへ
    アーセナル
    最強化計画
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 高校サッカーダイジェストVo.40
    1月12日発売
    第102回全国高校選手権
    決戦速報号
    青森山田が4度目V
    全47試合を完全レポート
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ