しかし今回は、チェフが左横にひとっ飛び。シグルドソンのミドルを弾き出した。
 
　すると67分、ロラン・コシエルニーが待望の追加点を決めるのだ。奇しくも元アーセナルGKのウカシュ・ファビアンスキによるファンブルから生まれたものだった。
 
　キーパーチャージを主張したいファビアンスキの気持ちは理解できる。ただ、浮き球に対してキャッチングではなくパンチングを選択していれば、回避可能なピンチだった。
 
　チェフをゴールマウスに迎えた今シーズンのアーセナルは、スウォンジー戦がプレミアでは６試合目のクリーンシート（無失点試合）。過去２シーズンは、同時期にいずれもクリーンシートが３試合だけだった。
 
　CBのペア・メルテザッカーは、「危機一髪の場面でも救ってもらえると、信じて闘える。この精神面の変化は、ディフェンス陣だけではなく攻撃陣にとっても大きい」と、チェフ加入のインパクトを語っている。
 
　デイビッド・ジェームズが持つ無失点試合数のプレミア最多記録（169）まであと１試合に迫ったチェフ。11月８日の次節は、地元の宿敵トッテナムとの対戦だ。
 
　ホームで迎える北ロンドンダービーで、新守護神がプレミアの偉大なGKの記録と並べば、マンチェスター・シティと首位を競うアーセナルも、今シーズンのプレミアの頂点を目指す自信と勢いを強めるのは請け合いだ。
 
文：山中忍
 
【著者プロフィール】
山中忍／1966年生まれ、青山学院大学卒。94年渡欧。イングランドのサッカー文化に魅せられ、ライター＆通訳・翻訳家として、プレミアリーグとイングランド代表から下部リーグとユースまで、本場のサッカーシーンを追う。西ロンドン在住で、ファンでもあるチェルシーの事情に明るい。