【連載】ミラン番記者の現地発・本田圭佑「ミハイロビッチ監督を簡単には切れない事情」

カテゴリ:海外日本人

マルコ・パソット

2015年10月27日

そもそも指揮官のスタイルに合うトップ下が不在だった。

オーナーのベルルスコーニ(左)はガッリアーニ副会長(右)とミハイロビッチの解任時期を相談したという報道も出ているが、ミランには抜き差しならない懐事情が……。(C)Getty Images

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 そんな状況とはいえ、ミハイロビッチ監督の手腕も決して褒められたものではない。たしかに多くの欠陥を抱えるチームだが、それでも10位(9節終了時点)に甘んじるようなレベルではない。少なくともヨーロッパリーグ出場権(4~5位)は争える戦力だ。チームは試合を重ねてもほとんど進歩を見せず、いつも不安気で意気消沈したままだ。
 
 そんなミハイロビッチ監督をチームは公には擁護するが、オーナーのシルビオ・ベルルスコーニはプライベートの場で何度も指揮官への不満を周囲にぶちまけている。イタリアで「ベル・ジョーコ(美しいゲーム)」と呼ばれる攻撃的でスペクタクルなサッカーを好む絶対君主にとって、今のミランのサッカーは気が滅入るだけの代物のようだ。
 
 クラブがミハイロビッチを新監督に指名したのは、何よりもその鬼軍曹的な手法を買ってのことだ。たしかにミラネッロ(ミランのトレーニングセンター)には、改めるべき点が少なくなかった。選手はプロらしからぬ、なあなあな雰囲気に浸り、勝利への執着心に欠けていた。強権発動的なやり方を駆使し、こうした部分の改善はすでに見られている。
 
 しかし、テクニカルな部分での改革は、それと比べると成功しているとは言い難い。そもそも就任当初にベルルスコーニとの会談で、システムをオーナーが好む4-3-1-2にすると約束してしまったことが、間違いの始まりだった。
 
 ミハイロビッチが志向するプレースタイルに合った、スペースを突く動きに優れたトレクァルティスタ(トップ下)が、ミランに不在なのは最初から分かっていたではないか。本田圭佑はもちろん、ジャコモ・ボナベントゥーラやスソもそのタイプではない。
 
 このトップ下問題を含めて、手駒に合った戦術を模索しているうちに、チャンスすら作り出せず、無残にも失点を繰り返すチームに成り下がった。
 
 これまでミハイロビッチのチーム掌握力を評価していたサポーターも、こんな試合が続けばさすがに愛想も尽きてくる。サッスオーロ戦(10月25日のセリエA9節)のクルバ(ゴール裏)には、多くの抗議に混じって、こんな横断幕が張られていた。
 
「言葉だけは鬼軍曹だが、結局は選手もプレースタイルも何も変わらない」
 
 今夏の就任以来、ミハイロビッチがウルトラス(熱狂的サポーター)の非難の標的となったのは、この日が初めてだった。
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